国民年金保険料が納付期限までに納付されない場合、日本年金機構から納付督励が行われます。特に「赤い封筒」で送られた通告を無視していると、いよいよ大変なことになりかねません。実際の事例を元に、全国民に課される国民年金保険の納付義務について、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が解説します。
「ていねいな老後」を送る年金月20万円"西荻夫婦”を襲った日本年金機構からの「赤い封筒」の中身。お金の管理が「ていねいじゃない」息子が引き起こした悲劇とは?【社労士が解説】
日本年金機構から届いた赤い封筒
東京・杉並区で平和に暮らしている70代の老夫婦。自宅は代々受け継いだもので、自宅の一部を改装してカフェでも開こうかなと思っていた矢先、同居する息子宛に日本年金機構から赤い封筒が届きました。
これまでにも何度か封筒が届いていましたが、息子のAは気にする様子もありません。息子は2年ほど前に脱サラしたフリーのITコンサルタント。都心へのアクセスもよく、家族仲も悪くなかったので実家暮らしをしています。
両親は「息子は独立してもう2年ほど経っている。仕事も順調そう」とあまり心配はしていませんが、やはり日本年金機構から届く封筒は気になります。
カフェのオープンの件でいろいろと相談をしている税理士に封筒について聞いてみたところ、「それは年金保険料を納めていない可能性がありますね。財産が差押えられてしまうかもしれません。社労士を紹介しますから早めに対応したほうがいいと思いますよ」と言われました。
慌てた両親は息子を問い詰めます。「大丈夫、大丈夫」と繰り返す息子でしたが、社労士から財産差押えの話を聞いて態度が一変。「実は年金の保険料が払えない。何とかしてくれ」と両親に泣きついてきました。
ていねいな老後を送る老夫婦は「私たちの暮らしはどうなるの…」と悲嘆にくれるばかりです。
国民年金には必ず加入
日本は国民皆年金。よって、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方はすべて国民年金に加入します。国民年金の被保険者には3種類あり、働き方などによって第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者のいずれかに分類されます。
・第1号被保険者:自営業者、フリーランス、農業者、学生、無職の方など
・第2号被保険者:会社員や公務員など厚生年金の加入者
・第3号被保険者:会社員や公務員などに扶養されている配偶者
Aさんのように脱サラしてフリーランスになった場合、第2号被保険者から第1号被保険者へと種別が変更されます。自動的に変更されるわけではないので、会社から退職証明書や社会保険資格喪失証明書を発行してもらい、退職日の翌日から14日以内に住所地の市区町村で手続きをしなければなりません。
国民年金の第1号被保険者になると、自分で保険料を納める必要があります。令和6年度の保険料額は1か月あたり16,980円。決して軽い負担ではありません。