投資初心者が知らぬ間に陥る「落とし穴」

そこで言われたのが、「新NISAでは、商品を売却した場合、売却した商品の簿価の分だけ非課税保有限度額が復活し、翌年以降に再利用することが可能」ということでした。

売却で空いた枠は、翌年以降しか使えないのです。しかも再利用できる非課税保有限度額がその年の年間投資枠に上乗せされるわけではないので、来年は今年買っていた分を買い直すことしかできないというわけです。

何もしなければ、成長投資枠で今年240万円、来年もさらに240万円投資できたはずでした。しかも、結局相場は戻ってしまったので、このままだと安く売って高く買い戻すことになり、損をする結果になってしまいます。

枠の再利用ルールは新NISAの基本的な仕組みとして事前に知っておくべきことです。しかし、太郎さんはテレビやネット、SNSの断片的な情報を得ただけで「分かったつもり」になっており、きちんと把握できていなかったのです。

また、太郎さんは、投機と投資の違いを理解していませんでした。投資は、出したお金で企業に新たに価値を生み出してもらい、その価値の分配にあずかるものです。一方、投機は、価格の動きだけをとらえ安く買って高く売ることを目的とします。

太郎さんは、知らず知らずのうちに投資しているつもりが投機をしてしまっていたのです。これは多くの投資初心者が経験する「最初の試練」です。

この相場の乱高下の裏では、ほんの一握りの百戦錬磨の投機家やコンピューターたちが大儲けをしているのです。負け組の損失と勝ち組の利益の合計がゼロとなることから、投機取引はゼロサムゲームとも呼ばれています。これは、自分では投資をしているつもりが、知らないうちに投機に巻き込まれてしまったことの結果なのです。