離婚が成立した場合、「財産分与」を行う必要があります。しかしながら離婚に至るまでの過程で関係性が壊れてしまい、夫婦間の話し合いが難しい場合もあるでしょう。では、すんなり財産分与を受け入れてくれれば万事解決かというと、そうとは限らないと露木行政書士事務所の行政書士である露木幸彦氏はいいます。本記事では、露木氏が唐津美枝子さん(61歳・仮名)の事例とともに、財産分与における配偶者の「隠し財産」への対策について解説します。
「夫と同じ墓に入りたくないんです…」夫の飲酒・女性・金銭すべてのトラブルに耐え続けた61歳“サレ妻”がついに離婚を決意!「財産分与」で受け取る金額を〈約1,300万円〉上乗せできたワケ
「昭和の亭主関白」を絵に描いたような夫
夫は「昭和の亭主関白」を絵に描いたような人物。まず夫は酒癖が悪く、直立歩行できないほど飲み過ぎたり、居酒屋で他の客に「うるさいわ!」と絡んで喧嘩になったり……美枝子さんは「夜中の1時以降、主人を迎えに行った回数は両手の指では足りないくらい。駅、居酒屋、警察とか……」とため息をつきます。
次に夫は女癖も悪く、同僚男性の妻、旧友男性の妻、そして親戚男性の妻などを手当たり次第に口説き、連れ出し、関係を持つことを繰り返しました。最初のうち、美枝子さんは夫のことを注意していたのですが、夫は「浮気じゃなくて友達だ」、「不倫じゃなくて本気だ」「継続じゃなくて終了だ」など屁理屈のオンパレード。美枝子さんは「主人は聞く耳を持とうとせず、女遊びを続けたので、途中から何も言わなくなったんです」と語気を強めます。
とはいえ、酒や女で豪快に遊び倒すと、お金が湯水のように出て行きます。夫はどのように工面したのでしょうか? 夫の職業は外資系IT企業の会社員。アメリカで7年間、海外赴任した経歴もあり、全盛期の年収は1,400万円。誰もがうらやむ“上級国民”なのですが、年に3回はハワイへゴルフをしに出掛けて1回あたり100万円近くを使ったり、あわせて100万円以上するブランド物で全身を固めたり、サーキットで乗り回すスポーツカーに1,000万円以上をつぎ込んだり……美枝子さんは「『あればあるだけ使う』という感じで派手な生活を送っていました」と嘆きます。
このように夫は酒、女、金と悪事の限りを尽くしてきました。そんな夫の言いなりになりたくない、夫が「離婚したい」なら絶対に離婚してあげない、できるだけ夫を困らせたいという一心で美枝子さんは首を横に振り続けたのです。
美枝子さんには自立できるほどの収入がありませんが、それでも10年間、待機し続けられたのは夫が毎月12万円を美枝子さんの口座に振り込み続けたから。筆者は「旦那さんは誰かから『生活費の振り込みを止めると離婚に不利になる』と吹き込まれたのではないでしょうか」と指摘。
とはいえ夫が兵糧攻めをしなかったのは不幸中の幸いでした。夫婦の間には28歳の娘さんがいるのですが、夫の協力がまったくない「ワンオペ」育児を頑張り、彼女を立派に育て上げたのが美枝子さんにとって唯一の誇りだそうです。