アメリカの口座に残高が残っているのではという疑惑

7.アメリカの口座の預貯金(178万円)⇒インターネットバンキングの写し

夫はずっと日本にいたわけではなく、アメリカへ海外赴任していた経歴があります。美枝子さんの記憶では当時、現地の銀行で口座を開設し、その口座をメインバンクとして使っていたそう。もちろん、会社からの給料は日本ではなくアメリカの口座に振り込まれていました。

その口座に残高が残っているのではないか。美枝子さんがそう指摘すると夫は「いい加減、しつこいな!」と逆ギレしたのですが、美枝子さんが「それなら離婚しない」と告げると「しょうがない」という感じでインターネットバンキングの写しを提示してきました。そこには日本円で396万円の残高が残っていました。そのため、美枝子さんの取り分は178万円です。

最初の条件よりも約1,300万円の上乗せに成功

こうして美枝子さんは夫が隠している財産を見つけ、夫が最初に提示してきた条件より1,338万円も上乗せすることができたのです。総額で5,007万円ですが、このうち、離婚時に一括で受け取る金額は983万円。美枝子さんは離婚することで夫、そして唐津家と縁を断ち切ったため、今度は美枝子さんが入る墓がなくなってしまいました。

弟さんが実家を継いでいるようですが、美枝子さんは嫁に行った身分。美枝子さんの実家は弟さんが継いでいるとのことですが、保守的な家庭ということもあり、実家の墓に入れてほしいと頼みにくい状況です。そこで美枝子さんが一念発起。この一時金のなかから460万円(墓石代、永代使用料、管理費)を使い、自分のための墓を購入しました。これで美枝子さんは残りの人生を全うすることができそうです。美枝子さんは晴れやかな顔で事務所をあとにしました。

ここまで美枝子さんの「離婚」という名の老い支度を見てきましたが、美枝子さんのように家庭を「壊された側」が我慢の限界に達し、堪忍袋の緒が切れ、「もう別れてよ!」と三行半を突き付けるのなら、まだわかります。しかし、現実には「壊した側」が「何も言わず別れてくれよ!」と離婚届を突き付けることも多いです。だから「された側」は離婚に応じず、別居に発展し、いつまでも話がまとまらない泥沼状態に至るのです。

しかし、壊された側とはいえ、離婚しない状態で人生を終えることは必ずしも本意ではありません。夫と美枝子さんで理由は異なりますが、早く離婚したいのはお互い様です。どこかのタイミングで「けじめ」をつけなければならないのなら、まだ体も動いてさまざまな手続きができるうちのほうがよいでしょう。「私は悪くないのに」という気持ちがあっても、決断するのなら早ければ早いほど手遅れになりません。

露木 幸彦
露木行政書士事務所
行政書士・ファイナンシャルプランナー