睡眠不足は免疫力も弱める

睡眠不足で免疫が低下、がん発症リスクが増加

身体に細菌やウイルスが侵入すると、自然免疫が排除してくれます。そのため、私たちは簡単には病気にかかりません。しかし、睡眠不足によって睡眠負債がたまると、免疫の一部であるナチュラルキラー(NK)細胞の活性度が低下することが明らかになっています。

そして、免疫の低下は、がんの発症リスクも増加させると考えられています。人間の身体には、1日につき5000個のがん細胞が発生しています。それでもがんを発症しないのは、自然免疫によって排除されているから。睡眠不足が続くと免疫細胞の活性が低下し、がん細胞を制御する能力を低下させてしまうのです。

睡眠不足は自然免疫を低下させる

自然免疫とは、生まれつき身体に備わっている免疫のこと。病原体の侵入を感知し、排除してくれますが、睡眠不足が続くとこの活動が弱まります。その結果、風邪にかかりやすくなったり、悪化しやすくなったりすることも。

睡眠不足が続くと…
・免疫細胞の活性ダウン
・抗体ができにくくなる
・炎症が起こりやすくなる

睡眠不足は、ウイルス感染後の回復過程にも影響を与えます。インフルエンザの予防注射を受けた場合でも、睡眠不足の人は抗体がうまく生成されにくいという研究結果も。

睡眠不足でがんの発症リスクも増加

東北大学の研究によれば、40~79歳の日本人女性約2万人を8年間追跡した結果、平均睡眠時間が6時間以下のグループでは乳がんの発症リスクが1.62倍に。同様に男性約2万人を7年間追跡した結果、前立腺がんの発症リスクが2.08倍高かったという報告があります。

柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋
柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋

ワクチンの効き目も睡眠不足で弱まる

近年、ワクチンと睡眠との関係にも注目が集まっています。フランスの研究では、インフルエンザワクチンの接種前後の睡眠時間が短いと、ワクチンの効き目が弱まってしまうことがわかりました。

柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋
柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋