自覚しにくい「睡眠時無呼吸症候群」

たかがいびきと侮るなかれ…睡眠時無呼吸症候群に注意

睡眠の質を下げる要因の1つに「いびき」があります。「いびきがうるさい」と笑い話にしがちですが、侮ってはいけません。大きないびきは睡眠時無呼吸の可能性が高いのです。

睡眠時無呼吸症候群は中等症以上の潜在患者数が900万人と言われています。睡眠中の血中酸素濃度の低下が繰り返されることで、脳卒中や心臓発作などの重篤な疾患のリスクが大幅に上がります。また、脳が非常事態を感知し、覚醒反応を起こすため、睡眠の質が大きく下がります。吸気時に気道が閉塞するため、胸腔内圧が下がって心房から利尿物質が放出されることで、夜間頻尿も引き起こされます。

睡眠中に呼吸が止まるしくみ

仰向けに寝ると睡眠時に舌根が下がり、空気の通り道が細くなっていびきをかきます。ひどくなると気道が塞がれ、呼吸ができない状態に。ほかにも、重力で口やのどの周りの筋肉が下がったり、下あごが後方に傾いたりすることなども原因になります。

柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋
柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋

睡眠時無呼吸症候群になりやすい人

睡眠時無呼吸症候群は、昼間の眠気やいびき、睡眠の質の悪さの自覚にかかわらず、潜在患者数が非常に多い病気です。あごの骨格が小さい、下あごが後ろに下がっている、肥満、喫煙や飲酒の習慣がある、鼻がつまっている人などに起こりやすいとされています。更年期までは男性の患者が圧倒的に多いものの、以降は女性の患者も増えるため、高齢者では患者の男女比がほぼ同数です。

柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋
柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋

気道を確保するのが一番の対策

睡眠時無呼吸になると、夜間に何度も目が覚めたり、睡眠が浅くなったりするなど、睡眠の質が極端に低下します。この状態が長く続くと将来的に高血圧、脳卒中、心筋梗塞、大動脈解離といった重篤な病気にかかるリスクが大幅に上がるため、早めの対策が求められます。

柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋
柳沢正史『今さら聞けない 睡眠の超基本』より抜粋

柳沢 正史
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授
株式会社S’UIMIN代表取締役
医学博士

筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了後、31歳で渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター及びハワードヒューズ医学研究所にて24年間にわたり研究室を主宰。2010年に内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され、筑波大学に研究室を開設。2012年より、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム国際統合睡眠医科学研究機構を創設。2017年、筑波大学発のスタートアップベンチャー企業「S'UIMIN」を起業。2021年よりムーンショット型研究開発事業のプロジェクトマネージャーを務める。