理想の老人ホームを見つけた6ヵ月後…退去勧告を告げられたワケ
在宅での介護のほか、老人ホームへの入居という選択肢も。段差が多く、すでに築60年にもなる自宅での1人暮らしに不安を抱えていたという、松本知子さん(仮名・79歳)。80代になるタイミングで、老人ホームへの入居を決意したといいます。
いくつか見学を行い、第1候補にあがったのは新設の有料老人ホーム。
――古い家に住んでいたからでしょうか……新しい施設にひかれて
懸念はその費用。家賃の前払いとなる入居一時金は800万円。月額費用は23万円で、プラス4万~5万円程度かかることが多いといいます。
松本さん、預貯金は1,500万円。年金は月15万円。入居一時金は貯蓄から、月額費用と年金の差は月15万円程度。そこを貯蓄でカバーするとなると4年ほどで底をついてしまう計算です。入居する老人ホーム=終の棲家として考えていた松本さん。できれば妥協はしたくない……そこで自宅を売却し、費用に充てることにしたといいます。自宅の売却で2,000万円程度を用立てる目途がたち、晴れて第一希望のホームへの入居が決まりました。
めでたし、めでたし。
とはいかないのが、難しいところ。入居して半年ほど経ったとき、ホームから退去勧告が。持病の糖尿病が悪化し、インスリン注射が必要に。「うちでは医療行為に対応できないので」というのが勧告理由。
――終の棲家と考えていたのに
――戻る家ももうないし
――まさか、こんなことになるなんて
残された時間は3ヵ月。その間になんとか受け入れてくれる新しいホームを見つけることができた松本さん。ただ「新しいホームで余生を過ごす」という願いは、諦めるしかなくなりました。
老人ホームに入居が決まれば「最期までここで」と考えるかもしれませんが、施設によって退去要件があり、その要件に当てはまる場合は、ホームから退去勧告がされます。
よくある理由は「暴力行為・迷惑行為」「継続的医療」「長期入院」「利用料未払い」の4つ。施設によって異なりますが、勧告後の猶予期間は3ヵ月。その間に、新しい施設を見つけたり、自宅に戻ったりしなければなりません。
このようは事情があるので、「自宅を売却して老人ホームに入居」という場合は、そのタイミングに注意を払いたいもの。「出ていかないといけないのに、戻るところがない……」と、途方に暮れることになります。
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