複雑な年金制度ですが、年金が減額される/増額されるという、「年金の繰上げ受給」「年金の繰下げ受給」の認知度は7割超。ただ、細かなところまで知っているかといえば、自信のない人がほとんどでしょう。実は注意書きレベルのルールで涙する人もいるようです。
年金「月5万円」増額のはずが…68歳男性、年金請求で判明した「年金繰下げ無効」に怒りも、年金事務所職員「ルールですから」で撃沈 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金の繰下げ受給のデメリット…さらなる「落とし穴」に悶絶

年金が減額となる「年金の繰上げ受給」は損で、年金が増額となる「年金の繰下げ受給」は得にみえますが、何事もメリットもあればデメリットも。

 

年金の繰下げであれば、大きく3つのデメリットが語られます

 

【年金の繰下げ受給、3つのデメリット】

1.亡くなるタイミングによって、総受給額は65歳で受け取ったほうが多くなる場合がある

2.年金受取額が多くなるため、税金や保険料負担が重くなる場合がある

3.加給年金や振替加算が受け取れなくなる

 

さらに年金の繰下げ受給に関して、加藤豊さん(仮名・68歳)は「なんだよ、変なルール、作りやがって」と怒りをあらわにします。

 

運送関連の会社で働く豊さんは、65歳で年金を受け取っていれば月18万円がもらえるはずでした。勤めている会社では特に定年はなく、65歳以降は週3程度の契約でそのまま働くことに。月収は15万円程度でしたが、年金を受け取らなくても生活できそうでした。それで「その分、年金が増えるなら」と年金の繰下げを選択しました。

 

それから3年後、腰の持病が悪化し、長時間座っているのがツラくなってきたところで「そろそろ年金生活に入っていいか」と決断し、現役を引退。年金の請求をしに年金事務所を訪れました。

 

豊さんの待機期間は3年6ヵ月。増額率は29.4%で、65歳で受け取っていれば18万円の年金は23.3万円ほどになるはずです。「老後にプラス5万円はデカい!」とウキウキしていると、職員から思わぬことを伝えられます。

 

――3年前に奥様を亡くされていますよね

――……あっ、そうですね。それが何か関係ありますか?

――亡くなられた時点で遺族給付を受け取る権利が発生し、繰下げ受給の申出ができないんですよ

――つまり、どういうことですか?

――年金は月18万円になります

 

日本年金機構のホームページでも、繰下げ受給の注意点として以下の一文が記されています。

 

65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができません。

 

豊さんの場合、奥さんを亡くした時点で繰下げ受給の申出はできなくなり、ただ年金が増える気でいただけだった、という顛末。

 

――なんなんだよ、それ、おかしいじゃない

――しかし、ルールはルールなので

 

他にも公的年金にはさまざまなルールがあり、該当するか、該当しないか、素人からは分かりにくいこともあります。しっかりと年金事務所に問い合わせるか、お金のプロに相談するのが確実です。

 

[参照]

内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』