医師の松永正訓氏によると、医師の中にも二通りの人がいて、診療報酬にあまりこだわらない人と、強く執着する人がいるようです。あなたは気づかないうちに「おいしい患者」として搾取されていませんか? 本稿では、医師の松永正訓氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、診療報酬にこだわる医者を見極めるポイントについて解説します。
過剰な検査やムダな薬の処方で医療費を“余計”に取られていませんか?お金儲けに走る医者を見分ける「たった1つの方法」【現役医師が解説】
診療報酬にこだわる医者を見極めるために
病院の勤務医と開業医の最大の違いは、医者が経営のことを考えているかどうかです。私は19年間、大学病院に籍を置きましたが、医療をやりながら、収入が多いとか少ないとか考えたことは一度もありませんでした。
そもそも先輩の医師の中にそういう話をする人がいなかったので、収入の話をしたことがありません。研修医の頃は、何にもできない自分がお金をもらっていいのかと真剣に悩んだほどです。
ですから、勤務医の先生で、診療報酬を考えながら医療を行なっている人は皆無と言っていいでしょう。医者が行なう診察や検査、投薬などがどれくらいの収益になるか知っている人などまったくいないと思います。
しかし開業医になると、そうはいかなくなります。公立病院は年間に何億円、何十億円の赤字を出しても潰れることは普通ありませんが、個人のクリニックは潰れます。2020年のコロナ禍で、私のクリニックの近所の小児科医院はクリニックをたたんでしまいました。最悪の状態に陥る前に廃業したようです。
開業医には二通りの人間がいる
開業医の中にも二通りの人がいて、診療報酬にあまりこだわらない人と、強く執着する人がいるように見えます。
医療法では、営利を目的にクリニックを開設することを禁じています。つまり、お金儲けを目的にクリニックを作ってはいけないのですね。
私が開業医になった理由はここでは詳しく書きませんが、要は、「開業医になるしか能がなかった」から開業医になったのです。私にできることは医者しかありません。ですので、私は二通りのうちの前者です。診療報酬にこだわりませんし、自分の行なっている検査や処置がいくらになるのか全然知りません。
ただ結果として多くの患者家族が来院してクリニックはちゃんと走っていますので、地域医療に役立ち、またスタッフに生活上必要な給料をきちんと支払うことができている状態です。
一方で、診療報酬に執着する開業医は、確かにいるように私の目には映ります。少し前に、「医は仁術ではなく、算術だ」という言葉が流行りました。診療報酬がどんどん上がっていき、医者(特に開業医)の経済状況が極めてよくなり、患者さんを診ることよりも、お金儲けを考えていると医者が世間から見られていたからでしょう。
日本経済が失速してから、医師の診療報酬もそれほど伸びなくなったようです。その影響か、「医は算術」という言い方は今ではあまりされなくなりました。それでも、今の医療において、ムダな検査やムダな投薬はまだまだ残っているように見えます。