新型コロナウイルスやインフルエンザなどの罹患は誰でも避けたいものです。「風邪だから病院に行きたいけれど、待合室でほかの患者から感染症をうつされたら元も子もない」そんな不安を感じたことがある人は少なくないでしょう。しかし、医師の松永正訓氏によれば、「待合室で感染することは、まずない」とのこと。今回は松永氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、感染症に関する誤解や病院側の対策についてご紹介していきます。
待合室で感染なんて、まずありません
朝、クリニックが診療開始になると多くの患者家族が中に入ってきます。たちまち20人待ちのような状態になり、多くの患者家族は「車の中で待っています」と言って、待合室から出ていきます。その気持ち、分かります。待合室でほかの感染症をうつされることがイヤなのでしょう。
私のクリニックは比較的待合室が広いので、今から述べる私の説明はもしかしてすべてに通用するわけではないかもしれません。ですが、結論を一言で述べると、待合室で新型コロナやインフルエンザをうつされるということは、まず、ありません。
いや、絶対にないと言ってはいけないかもしれませんが、私は開業して18年でそういうケースを一度も見たことがありません。待合室でうつったのであれば、その数日前に別の理由で当院を受診しているはずです。たとえば、アトピー性皮膚炎で診察を受けたとか。でも、そういう例を経験したことがないのです。
待合室でうつされたのかなと思って
今から数年前ですが、高熱の小学生が冬に私のクリニックにやってきました。インフルエンザの流行期です。私はお母さんに聞いてみました。
「学校のクラスにインフルエンザの子はいますか?」「いえ、一人もいません」「家族には?」「いません。考えられるのは、ここです。一昨日、風邪症状でここに来たんです。待合室でインフルエンザをうつされたのかなと思って」「なるほど、さっそく検査してみましょう」
結果は陰性でした。後日その母親から聞いた話では、その熱は2日ほどでスッと下がったそうです。やはりインフルエンザではなかったのです。
インフルエンザとか、アデノウイルスとか、溶連菌感染症は、ほとんどすべてが保育園・幼稚園・学校・職場・飲み会などの集団の場でうつります。もちろん家族が感染症に罹っていれば、それもうつります。数時間、ずっと同じ部屋にいて、一緒に遊んだり、話したり、食事をするからうつるのでしょう。