60歳定年で仕事を辞めた夫、60歳定年以降も契約社員で働く妻…夫70歳で死亡したら
68歳女性の場合、夫は60歳の定年をもって退職。2つ年下の女性は、60歳で定年を迎えたのち、再雇用制度を利用し、同じ会社で契約社員として働き続けることを選択。現在に至るそうです。勤務先の再雇用制度では契約社員として働けるのは70歳まで。女性も70歳まではこのまま働くつもりだといいます。
夫が定年で現役を引退したのは、持病の悪化によるもの。働けないというレベルではありませんでしたが、勤続40年。やり遂げた感もあったため、ここで仕事を辞めることにしたといいます。一方で女性は「どれほど老後が続くか分からない」という不安から、働き続けることを決めました。
夫の年金は月16.5万円ほど。預貯金は3,000万円ほどあります。総務省『家計調査 貯蓄・負債編 2023年平均』によると、65歳以上の高齢者夫婦の貯蓄は平均2,656万円、負債は31万円。純貯蓄額は2,625万円です。女性は平均よりも多くの貯蓄がありますが、それでも老後への不安感は大きいといいます。
それでも「わたしも仕事を辞めたら、どこか旅行にでもいきたいわね」と、妻の現役引退後のささやかな夢を語ることも。そんなとき、夫の持病が悪化し亡くなってしまいます。
妻は給与があるため、年金はまだ受け取っていませんでした。いわゆる「年金の繰下げ受給」。年金を受け取るタイミングを遅らせる分、年金は増額となります。しかし遺族年金の受給権が発生すると、その時点で年金の繰下げによる増額率は固定に。そのため、夫を亡くした後、年金を請求することに決めた女性。年金事務所を訪れました。
女性の老齢年金は、年金の繰下げにより30.1%の増額。さらに65歳以降も厚生年金に加入していることからその分も反映され、受給額は月21万円に。
一方、夫の死亡による遺族厚生年金は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。また65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある人が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「①死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「②死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。結果、遺族年金は11万円ほどの計算になります。
しかし、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある方は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止に。つまり、自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金の差額分しかもらえず、そもそも「自身の老齢厚生年金」>「遺族厚生年金」の場合は、1円ももらえないことになります。女性はこのケースにあたり、遺族厚生年金は1円も支給されないことになります。
――えっ、なんですか、そのルール。働くだけ無駄じゃないですか?
自身の年金だけでも十分ですし、預貯金もある。恐らく、何不自由ない生活が送れるだけのお金はあります。それでも「ルールなので」の説明には、少々納得がいかない様子。
どちらにせよルールはルール。年金制度をきちんと仕組みを理解せずに皮算用していると、思い描いていた金額と、実際の支給額が大きく乖離することも珍しくないのです。
[参照]