厚生労働省によると、国民年金の平均受給額はわずか月5万5,518円です。一方で、高齢者の生活費は単身でも毎月16万円以上。まったく間に合っていません。収入は毎月ひと桁万円の国民年金のみ、そして貯金もほとんどない高齢者が生活保護を断られた場合、どうすればよいのでしょうか。今回は、田中さん(仮名)の事例とともに非正規雇用者が抱える年金問題について解説します。
生活保護も断られ、収入は「年金月5万円のみ」。酷暑でもエアコンつけられず…68歳で失業した非正規雇用おひとりさま老人の「酷すぎる終着点」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

身内からの支援も生活保護も受けられない高齢者になすすべなし?

独身で頼れる身内もおらず、生活保護の支給対象にもならない田中さん。このままでは死ぬまで老体を引きずり、仕事を探し続けるしか道はなさそうです。

 

しかし、そんな高齢者でも利用できる制度として、生活福祉資金貸付が挙げられます。なかでも「総合支援資金」では、生活の立て直しや住宅の入居費、さらには滞納している公共料金等の支払いに関わる費用などさまざまな理由で借入可能です。

 

借り入れなので利息がかかりますが、利率は年1.5%程度で、民間企業の提供しているローンと比べてはるかに良心的です。加えて、一定の条件を満たせば返済免除を受けられるケースもあります。

 

出所:厚生労働省生活支援特設ホームページ
[図表4]免除要件など 出所:生活福祉資金の特例貸付制度概要 厚生労働省※3

 

また、田中さんには持ち家があるので、リバースモーゲージを活用できるかもしれません。リバースモーゲージは、家を担保にしてお金を借りて当人が亡くなったあとに家が売却されて借入金が支払われる制度です。存命のあいだは、自宅を失ってしまう心配はありません。

 

年金不足の根本的問題を洗いざらい解決することは難しいです。しかし、なんらかの制度を活用することでほんのわずかでも生活が楽になるかもしれません。

 

<参考>

※1:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和3年度)」

https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf

 

※2:厚生労働省「最低生活費の算出方法(令和5年度)

https://www.mhlw.go.jp/content/001152601.pdf

 

※3:生活福祉資金の特例貸付制度概要 厚生労働省

https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/index.html

 

 

北川 和哉