高齢化に伴い、深刻化する親の介護問題。そのようななか「介護は嫁の務め」などと、旧態依然の考えていると、とんでもないしっぺ返しをくらうことも珍しくないようです。
悔しくて、悔しくて…〈90歳義母〉の下の世話に〈年下サラリーマン夫〉の暴言に我慢の限界。63歳嫁、涙の決断【長男の嫁の壮絶介護の実態】 (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の義母、介護スタッフと嫁の区別もつかず…繰り返される嫁への悪口

――便利な召使いくらいにしか、思っていないのではないか

 

結婚以来、5つ下の夫の実家で暮らしてきたという、63歳の女性。2人の子どもは独立し、義父はすでに他界。87歳になる義母と夫の3人暮らしですが、3年前から義母は認知症を患い、最近は女性を嫁と認識することも少なくなっているといいます。

 

認知症が発覚した際、遠くに暮らす義妹と夫と三人で、義母を施設に入れるかどうかの話し合いをしたといいますが、その時、夫は「看護婦だったんだから、自宅で面倒を看られるだろう」とひと言。「確かに」と、義妹も同調。結婚当初、夫婦共働きでしたが、50代手前で体を壊し、退職。以来、専業主婦を続けていたといいます。

 

――確かに、他の人よりは介護の知識はあるかもしれないけど

 

納得しつつも、夫や義妹の物言いが気になっていたといいます。それから3年。義母は女性と介護スタッフの区別もつかないようになったといいます。どうやら義母の意識は、女性と夫が結婚したばかりの頃に戻っているらしく

 

――うちの嫁は気がきかない

――共働きだからって家事は中途半端。嫁失格

 

と嫁=女性の悪口を言う一方で

 

――うちの長男は、本当によくできた息子で

――頭が良くて、一流大学を出たし、一流企業に勤めているの

 

と長男=夫の自慢話をしてくるといいます。「自分を悪口を言われているのに、“そうなんですねー”と聞いてあげて……結構きつい」と女性。さらに最近はひとりで用を足すことができなくなり、下の世話もするようになったといいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』では、妻からみたときの親の介護の実態を明らかにしています。それによると、妻の実親で介護が必要なのは、父で6.8%、母で13.7%。義親で介護が必要なのは、義父で4.8%、義母で11.2%。

 

また介護の必要な親の主な介護者をみていくと、実父を介護するのは、「実母」が最も多く33.2%、ついで「妻(娘)」で21.4%。実母を介護するのは「妻(娘)のきょうだい」が最多で31.2%、ついで「妻(娘)」で27.6%。義父を介護するのは、「義母」が最多で33.2%。「妻(嫁)」が主な介護者となるのは7.8%と少数派です。最後に、義母の介護をするのは、最多が「夫のきょうだい」で22.5%。続いて「夫」が16.3%、「妻(嫁)」13.2%と続きます。

 

平均寿命や夫婦の年齢差から考えて、父の他界後に母の介護が必要になる、というパターンが多いと推測されます。そのため、義母の介護をする「嫁」の割合は、義父のときよりも5ポイントほど多くなっています。