周辺に住む人たちの健康な生活に欠かせない「地域のクリニック」。混雑することも多いため、対策として「時間予約制」を取っているところも少なくありません。しかしながら、そうした対策が裏目に出て、患者と医者の双方に強いストレスがかかることもあると、医師の松永正訓氏はいいます。そこで本稿では、松永氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、地域のクリニックが抱える「待ち時間」と「診察時間」の問題について解説します。

「どうにかならないの?」何時間も待ったあげく診察は一瞬という病院事情…解決するための“唯一の方法”とは【現役医師が解説】
すでに予約でいっぱいです!
そして、クリニックがこうした予約制を取り入れると、自然と1日に診る患者数の上限が決まってしまいます。私が聞くところによれば、開業医は患者数を100人くらいで切っているところが多いようです。
しかし、医療には必ず緊急疾患が含まれます。小児クリニックでも成人のクリニックでもそれは同じことです。命に関わるような激烈な症状ならば、患者家族は救急車を呼ぶでしょう。でもその手前だったら?
子どもで言えば、髄膜炎とか腸重積という病気は、放置すれば命に関わりますが、初期の段階においては一般の人には診断も、緊急の度合いも分かりません。大人でも狭心症とか、心筋梗塞の初期とかは同じような状況になります。「何かヤバいみたい」ということは分かりますので、すぐにかかりつけの医師に診てほしいと思うでしょう。
そのときクリニックに連絡を入れてみて、「予約がいっぱいなので診ることができません」と言われたら、患者さんは相当困るのではないでしょうか。すると、かかりつけの患者さんは予約が取れないという、さらにもう一段階強いストレスを抱えます。
カギとなる「受診しない患者」
ここまで話を進めてくると、もう、どういう解決策がいいのか誰にも分からないということが見えてくると思います。
診察時間が短いことと、待ち時間が長いことは表裏一体の関係にあります。結局、「患者さんが多く、医者が少ない」という問題点に行き着くのです。医者はすぐには増えませんから、解決法があるとしたら患者さんの数を減らすことです。それにはどうしたらいいでしょうか。
本当に医者の判断を必要としない患者さんは、受診をしないことです。
もちろん、この判断ってかなり難しいものです。ネットを見ても、書籍を見ても、「こういう症状はコワいからすぐに受診!」とは書いてありますが、「こういうときは行かなくても大丈夫」とは書いてありません。行かなくてあとで何かあったら責任問題になるからでしょう。むしろネットには、読者の不安を煽るようなことがたくさん書かれています。