周辺に住む人たちの健康な生活に欠かせない「地域のクリニック」。混雑することも多いため、対策として「時間予約制」を取っているところも少なくありません。しかしながら、そうした対策が裏目に出て、患者と医者の双方に強いストレスがかかることもあると、医師の松永正訓氏はいいます。そこで本稿では、松永氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、地域のクリニックが抱える「待ち時間」と「診察時間」の問題について解説します。
「様子を見ましょう」に隠された真意
医者は患者さんに向かってよく「少し様子を見ましょう」と言います。これってどういう意味でしょうか。
病気の重要度(緊急性)というのは、患者さんがどれだけ困っているか(症状が強い)という点と、その困った状態がどれだけ続いているかという長さの点から考える必要があります。両者の掛け算の値が高ければ、急いで診断をつける必要があるわけです。
「様子を見ましょう」というのは、その症状がどれくらい続くのかを見極めようという判断です。別の言い方をすれば、どれくらい続くか見てもいいくらいに症状が弱いということです。
ですから、患者さんとしては、「めちゃめちゃ困っている状態」のときと、その状態が「ずっと続いている」ときにクリニックに行けばいいのです。
「念のための受診」とか、「早めの受診」とか、「きょうだいの病気のついでに受診」を私は個人として否定する気はありませんが、明らかにクリニックが混雑している日(たとえば、休み明け、または休み前)にわざわざ行く必要はないのではないでしょうか。別の空いていそうな日に行って大丈夫なはずです。
これからの時代、うまいクリニックのかかり方の知恵みたいなものは、ますます重要になると思います。
- 主流になってきた時間予約制では、診察時間を短めに設定せざるを得ない
- 患者が診察時間の短さに不満を抱くように、医者もストレスを感じている
- 「緊急でなければ極力受診しない」という唯一の解決策に行き着いてしまう
松永正訓
医師