67歳サラリーマン(非正規)が直面する「年金支給停止」の理不尽
このまま女性や高齢者の就業が進めば、年金制度は今の水準に近い形で維持される。そんな未来を財政検証では示したわけですが、それに対して
――ふざけるな!
――何という、ヒドイ仕打ちだ!
と憤慨する、67歳のサラリーマン。65歳を超えて現役を引退しようと考えましたが、会社から懇願され、非正規社員として働いているそうです。「人手不足が深刻のなか、国は高齢者にもっと働いてほしいと考えているはず。なのに働きすぎると年金が支給停止になるなんて理解できない」と怒りを隠しきれません。
これは老齢厚生年金をもらいながら、厚生年金に加入=働いた場合、限度額を超えると老齢厚生年金の一部、またはすべてが支給停止になる在職老齢厚生年金によるもの。
その限度額は令和6年度で50万円。基本月額と総報酬月額相当額(毎月の賃金=標準報酬月額*と、1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額)が限度額を超えると、超えた分の半分の額が支給停止となります。
*毎年4・5.6月に支給された報酬月額を平均して、健康保険・厚生年金保険法の保険料額表に当てはめる。厚生年金保険法の標準報酬月額の上限は65万円
厚生労働省の調査によると、〈65~69歳・大卒の非正規社員(男性)〉の月給は32.3万円。年間47.3万円の賞与を得ています。つまり総報酬月額相当額は36.1万円。老齢厚生年金が月13.9万円以上だと、超えた分の半分の年金が支給停止となりもらうことができません。
男性の場合、月給は平均並みだったといいますが、業績と連動する賞与が年120万円になったそう。そうなると基本月額と総報酬月額相当額の合計が52万円となり、日本年金機構から「月1万円ほど支給停止になりますよ」と通知が届いたというのです。
たった1万円とはいえ、社会人になって以来、頑張って働いてきた先に手にする年金。それにも関わらず「高齢者なのに働きすぎです!」と年金が支給停止になるのは、納得がいかないでしょう。「ヒドイ仕打ちだ」と憤慨する気持ちも分かります。
在職老齢年金は、働く高齢者のほとんどが低賃金だった時代にできたもの。生活を安定させるために、「働きながら=在職、年金をもらえる制度」として作られました。年金+給与で生活を安定させることができるようになったわけです。
ところが、時代は変わり、在職老齢年金は高齢者の勤労意欲を阻害する制度という一面が強くなりました。高齢者に働いてほしいのか、それとも働いてほしくないのか……ちぐはぐな制度によって、高齢者の就業率上昇にブレーキがかかり、財政検証でのシミュレーション通りにいかない事態に直面する可能性もあります。そうなると全世代が不幸になることが目に見えているのです。
[参照]