5年ぶりの「財政検証」で将来の見通しは改善したが…
今月3日、厚生労働省は「年金の健康診断」といわれる財政検証の結果を発表しました。
日本の年金制度は、夫婦の年金額が、現役世代の男性の手取り収入の何%に当たるかを示す「所得代替率」が将来的にも50%を下回らないことを目標とされ、2024年度の「所得代替率」は61.2%。そして今回の財政検証では、4つの経済前提で試算を行い、実質成長率1.1%、実質賃金上昇率1.5%といった「成長型経済移行・継続ケース」では、2060年度の所得代替率は57.6%と、比較的高い水準で年金制度を維持できると試算しました。
また実質成長率-0.1%、実質賃金上昇率0.5%と現状維持の試算では、2060年度の所得代替率は50.4%。なんとか政府目標を上回ることができるという見立てです。
このような検証結果に対し、政府は「前回検証時よりも将来見通しが改善。今後100年間の公的年金の持続性を確認」と評価しています。
ただ今回の検証は、女性や高齢者の就業率が高まることで経済成長が促進されるというシナリオが中心。確かに、ひと昔前までは女性は結婚・出産でキャリアが中断。仕事復帰するのは稀でした。いまは働き方を変えることは多いものの、仕事は続けるというケースが多くなっています。
高齢者についてもそう。ひと昔前、年金受給が始まる年齢になっても働いているのは、自営業か、よほど生活苦の高齢者か。そもそも高齢者の働き口は極端に少ないものでした。それがいまや、高齢者が働く光景は当たり前になっています。
総務省『労働力調査』によると、65歳以上の高齢者の就業率は2022年で25.2%。10年で5ポイント以上も上昇しました。年齢ごとに細かくみていくと、「60~64歳」で73.0%、「65~69歳」で50.8%、「70~74歳」で33.5%、「75歳以上」で11.0%。10年間の推移をみていくと「65~69歳」の増加が顕著で、13.7ポイントの上昇を記録しています。