キャリアの節目にあるビジネスマンにとって、後から入社した社員を指導する際、リーダーシップをしっかり発揮し、後輩社員を育成できるかどうかは、その後のキャリアに大きく影響します。しかし、あくまで、「上司」と「部下」ではなく、「先輩」と「後輩」という立場上、なかなか指導が難しい場面も少なくありません。JMAM「基本能力研究会」の著書『新人指導の教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)より、後輩社員の育成に欠かせない重要なポイントについて、みていきましょう。
言われた仕事をやるだけの〈指示待ち社員〉の量産を防ぐ最善策!…やりがいのある仕事より、新人社員の〈やる気〉を引き出す「意外とシンプルなこと」  

新人のやる気を引き出す

「好きこそものの上手なれ」という言葉のとおり、新人の成長を大きく左右するのが、本人のやる気です。言われた仕事をやるだけの「指示待ち社員」では、会社としても困ってしまいます。自発的に仕事に取り組む人に育てていけるかどうかは、みなさんが新人のやる気を引き出せるかどうかにかかっています。

 

新人のやる気を引き出すには、大きく2つのポイントがあります。

 

1.達成感を味わわせること

教えられた仕事ができるようになったら、きちんとほめることです。小さなことでも、仕事が身についたら、そのつどほめましょう。新人はほめられることで自分の成長を実感し、やる気を出すものです。

 

また、どのような仕事でも、その目的や進め方を示したうえで、「どうしたらよいと思う?」と質問して考えさせましょう。そして、いい考えが出ればほめ、問題があるようなら「どのように問題があるか」を指摘して、助言をします。

 

こうして自分なりに考えて仕事を進めることに、新人がおもしろみを感じるようになれば、やる気のある自発的な人材へと育っていきます。

 

2.今後の仕事の幅の広がりを意識させること

その仕事をすることによって、今後、「どのような仕事の幅をもつことができるのか」「どのような部門とつながりをもつことができるのか」の2点を明確に伝えましょう。

 

一つひとつの仕事が新人の成長に結びついていくという考え方を教えられれば、仕事に対する意識も変わってきます。これは、みなさん自身にも当てはまることです。まず、みなさん自身が自分の幅を広げるため、指導に積極的に取り組む姿勢を示すことが大事です。

新人を職場に慣れさせる配慮

仕事そのものにおもしろさややりがいを感じても、職場の居心地が悪ければ、新人のやる気は引き出せません。新人を職場になじませることも、みなさんの大切な役割です。

 

新人が職場に慣れるためには、互いのパーソナリティを理解し合うことが必要です。

 

ランチやアフター5など、より気軽な雰囲気のなかで、雑談や趣味、将来やってみたいことなどを話し合えば、お互いに気心を知ることができるものです。新人は、周りに知り合いもなく孤立しがちなので、できるだけこまめに声をかけましょう。

 

ただし、押しつけは禁物です。新人のなかには、どんな人ともすぐに打ち解ける人もいれば、人見知りしやすい人もいます。一見、コミュニケーションをとるのを拒んでいるのではないのかと思える新人もいるでしょう。しつこく誘い続けると、むしろ反感を買う恐れもあります。

 

しかし、指導担当者は、自分が常に心を開いて相手を受け入れる準備があることを示し続ける必要があります。少し間を置いて再びランチに誘うなど、意識して接し続けてください。

 

さらに、社内外を問わず仕事に必要な人に引き合わせ、スムーズにやりとりできるようにしましょう。

 

そのためにも、新人によいアドバイスを与えてくれたり、折りに触れて新人を助けてくれると思われる人となるべく引き合わせるように心がけましょう。その場合は、事前に「新人が入ってくるので、いろいろとご協力をお願いすると思います。今度連れてきますのでよろしくお願いします」と伝えておきましょう。みなさん自身のネットワークを広げる機会にもなります。
 

 

 

JMAM「基本能力研究会」