今回の主人公、会社員Aさんは、定年後も継続雇用で働き続けています。しかし、役職定年・会社の経営不振・定年という3つのタイミングで大幅な収入減を経験。一時は1,000万円あった年収が、今は若手社員なみの360万円まで下がっています。Aさんのように、定年退職を迎えた後も同じ会社で働く人は増加傾向にありますが、継続雇用後の給与は定年時より低く設定されることが多いのが実情です。今回はそんな定年後の減収に対処するための給付金制度について、FPの南真理氏が解説します。
年収1,000万円から360万円に大激減で夜も眠れぬ61歳元部長…〈収入補填の給付金〉を受け取るも、まさかの金額に思わず「足りるわけないだろ」【FPの助言】
Aさんの今後のライフプランとは?老後の不安を一転させた妻の一言
その後、Aさんは改めてFPのところに今後のライフプランを相談しに行きました。
「給付金をもらえるって聞いて一瞬大喜びしたけれど、月2万円ちょっとじゃ定年前から減った分をカバーするのに足りるわけないんですよね。もちろん無いよりは全然いいのですが……。
それで、今更ですが妻と今後のことを話し合いました。そうしたら、びっくりなことに私に内緒で妻の実家から贈与を受けていたみたいで。その貯えが2,000万円ほどあると打ち明けられましたよ。私はあったらあった分使ってしまうから、内緒にしていたそうなんです。
さらに、結婚当初から毎月個人年金保険に積立をしていて、70歳から20年間、月5万円を受け取れることが分かりました。会社が傾きそうになった時も妻はドンッと構えていたし、本当に頭が上がりませんよ」とのこと。
Aさんは65歳の継続雇用満了までは働き続けることにし、コンパクトな住まいへの住み替えも検討しています。改めてライフプランを立て、今ある貯えや年金等を含めて試算した結果、老後の生活も工夫次第で不安なく過ごせることがわかりました。
ここまで解説したとおり、高年齢雇用継続給付金は、定年退職後の賃金が75%未満に低下した場合に国が賃金を補助してくれる制度です。しかし、申請をしなければ受け取ることはできません。会社任せにせず、自分が制度の対象となるのかを確認し、申請漏れのないようにすることが大切です。
また、Aさんの場合、そもそも「役職定年」で給与が下がるとわかっていたならば、お金の使い方をもっと慎重に考えるべきだったといえます。会社の経営不振もAさん個人のせいではありませんが、働いていたら予兆を感じることもあったのではないでしょうか。その段階で、夫婦で家計について話し合うべきでした。
Aさんにはしっかり者の妻がいて幸いでしたが、そうでなければ金銭的に不安を抱えながら老後を過ごすことになっていたかもしれません。「もしも」の事を考えて、早い段階から家計を守るための計画を立てておくことが大切です。
さらに、高年齢雇用継続給付金については、2025年4月から給付率が15%から10%へ縮小されます(※)。これから定年退職を迎える方は、制度の見直しについても情報収集をしておくようにしましょう。