「新NISA」をきっかけに、国内でも投資家が増えている

日本銀行の「資産循環の日米欧比較」によると、2023年3月末現在、日本の家計が保有する金融資産(2,043兆円)の構成は、現金・預金が54.2%、保険・年金・定型保証が26.2%、株式等が11.0%、投資信託が4.4%、それに債務証券・その他で4.2%と、現金・預金が半数以上を占めています。

株式や投資信託といった元本保証のない金融商品の保有割合は計15.4%と、米国の51.3%やユーロ圏の31.1%に比べ大幅に低くなっているのが特徴的です。

とはいえ、新NISAをきっかけに、日本国内でも徐々に投資を始める人が増えています。

日本証券業協会の「NISA口座の開設・利用状況、証券会社10社」によると、2024年2月末時点において、NISA(少額投資非課税制度)の口座数は約1,400万口座です。口座の開設件数は、2023年1~3月は1ヵ月平均で18万件であったのに対し、新NISAがはじまった2024年2月は1ヵ月で53万件と2.9倍に増えています。

また、「成長投資枠」の買付額は3.3倍、「つみたて投資枠」の買付額は3.0倍となっています

※ 2023年の各統計値はすべて1~3月の1ヵ月間の平均値。成長投資枠(2023年の一般NISAと比較)とつみたて投資枠(2023年のつみたてNISAとの比較)は、2024年1月~2月(1ヵ月平均)の買付額。

ファイナンシャルプランナーである筆者のところにも、30代を中心に関心が高まっており、新NISAに関する相談が増えています。また、50~60代の方であっても、退職金や相続などで得たまとまった資産を運用する選択肢のひとつとして、「新NISA」が入ってくるケースが増えたように思います。

ただし、このように、資産運用への関心が高まるのはいいことですが、「周りが新NISAを始めたから」「証券会社や銀行に勧められたから」といった理由で、株式や投資信託の仕組みを理解しないまま、周りに流されて投資をスタートさせるのは危険です。

銀行に預金をする感覚で投資を始めると、年齢を問わず大切な資産を減らしかねません。

銀行員に勧められるがまま、「毎月分配型の投資信託」を始めたAさん

Aさん(65歳)は5年前、退職一時金2,500万円を受け取り、それまで勤めていた会社を60歳で定年退職しました。

その後は働くことなく、5歳年下の妻と悠々自適なセカンドライフを送っています。

退職してすぐ、Aさんの自宅に、銀行員がやってきました。その人物は退職金が入金された口座の銀行員で、「年金受給までのつなぎ資金として、毎月収入があると安心ですよ」と、毎月分配型投資信託を勧めにきたのです。

たしかにAさんは、64歳からの「特別支給の老齢厚生年金(111万円:月9万円)」と65歳からの老齢厚生年金(228万円:月19万円)を受給するまで収入はありません。

数年間貯蓄を取り崩して生活していくのは心配な面もあり、年金を受給するまでの「つなぎ資金」があれば助かると思ったAさんは、銀行員に勧められるがまま、毎月分配型投資信託を1,000万円購入しました。そのときは、銀行に預金でもするかのような軽い感覚だったそうです。

それから5年のあいだ、Aさんの口座には毎月5万円前後の分配金が振り込まれました。Aさんは「あの銀行員のいうとおりにしてよかった」と大満足だったといいます。しかし……。