今回の主人公、会社員Aさんは、定年後も継続雇用で働き続けています。しかし、役職定年・会社の経営不振・定年という3つのタイミングで大幅な収入減を経験。一時は1,000万円あった年収が、今は若手社員なみの360万円まで下がっています。Aさんのように、定年退職を迎えた後も同じ会社で働く人は増加傾向にありますが、継続雇用後の給与は定年時より低く設定されることが多いのが実情です。今回はそんな定年後の減収に対処するための給付金制度について、FPの南真理氏が解説します。
年収1,000万円から360万円に大激減で夜も眠れぬ61歳元部長…〈収入補填の給付金〉を受け取るも、まさかの金額に思わず「足りるわけないだろ」【FPの助言】
定年後、賃金が下がった人がもらえる「高年齢雇用継続給付金」とは?
高年齢雇用安定法によって、60歳で定年後も従業員の希望があれば、会社側は65歳まで雇用を継続することが義務付けられています。
しかし、先ほども触れたとおり、継続雇用後の賃金は定年前より下がるのが一般的です。賃金が下がることによる従業員の不安解消と雇用の継続を支援するために給付されるのが「高年齢雇用継続給付金」です。
高年齢雇用継続給付金は公的保険の雇用保険から支給されます。また、高年齢雇用継続給付金には60歳以降も同じ会社で働く場合に支給される「高年齢雇用継続基本給付金」と、一度離職し、基本手当を受給した後、60歳以降に別会社に再就職した場合に支給される「高年齢再就職給付金」の2種類があります。
このうち、継続雇用を選択したAさんが受け取れる可能性があるのが、「高年齢雇用継続基本給付金」の方です。高年齢雇用継続基本給付金の支給要件は、60歳以上65歳未満で、5年以上雇用保険に加入していること、定年前と比べて賃金が75%未満となっていることです。
Aさんが受給できる高齢者雇用継続給付金の金額は?
では、Aさんは給付金をいくら受給できるのでしょうか。その前に、まずは定年退職前と比較して賃金が75%未満に低下しているかを確認する必要があります。なお、比較するのは現役時代の最高年収ではなく、定年退職前の年収という点には注意しましょう。
Aさんの定年退職前の賃金は月額45万円(年収540万円)で、定年退職後の賃金は月額30万円(年収360万円)です。30万円(支給対象月に支払われた月額賃金)÷45万円(60歳到達時の月額賃金)×100=67%(低下率)となるので、支給要件は十分に満たしているとFPはAさんに告げました。
また、低下率ごとに支給率が定められており、低下率67%の支給率は7.8%です。よって、30万円(受給対象月の月額賃金)×7.8%(支給率)=2万3,400円が、Aさんが月々受け取れる金額になります。
申請は原則、会社を通して行います。申請していないと受け取ることができないため、会社が制度を知らない場合には申請が漏れてしまうので注意しなくてはなりません。対象にもかかわらず申請をしていなかった場合には、2年間のみ遡ることができます。
FPに助言をもらったAさんは高年齢雇用継続給付金の申請をし、これまで受け取れていなかった期間の給付金も含め受給できることとなりました。