月給40%ダウンなんて信じられない…

もうすぐ60歳の誕生日を迎えるAさん。誕生日を迎えた月の末日に勤務先を定年退職します。

新卒で入社して以来40年近くを過ごしてきた会社での定年が近づくにつれ、大きなトラブル対応で苦労したことや、顧客の課題解決に貢献してとても感謝されたことなど、様々なことを思い出します。

会社の業績は好調。しかし深刻な人手不足です。会社からは再雇用を打診されていますが、通常、再雇用時には賃金が下がります。Aさんの場合も例外ではありません。

Aさんの退職時の月給は45万円。再雇用時の月給は27万円を提示されました。40%のダウンです。定年後は管理的な業務を離れ、仕事内容は多少楽になるとはいえ、やはり受け入れがたい水準だとAさんは感じています。

最近はまっすぐ家に帰らずに行きつけのスナックでママや常連さんに愚痴を聞いてもらう日々。「今はこうして気心が知れたスナックで話を聞いてもらって憂さ晴らししているけれど、給料が減ったら気軽に立ち寄ることもできなくなってしまうかもしれない」と思うと、どうしようもない寂しさが湧き上がってくるのでした。

そんなある時、スナックで時々会う常連さんの一人から「高年齢雇用継続給付って知っている?」と聞かれました。彼が話すところによると、再雇用後に貰える給付金があるとのこと。

雇用保険には失業給付以外にも給付金があることを知ってAさんは歓喜、働き続けることに前向きになりました。その晩のお酒の美味しかったこと! 久々にAさんはうまい酒を飲みました。

空白の5年間を埋める再雇用制度

わが国においては60歳定年制が一般的です。しかし、高年齢者雇用安定法により、企業は①65歳までの定年の引上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③定年制の廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施しなければなりません。

これは、老齢年金の支給開始年齢が原則65歳であることから、65歳までの雇用を企業に義務付けたものです。厚生労働省「令和5年高年齢者雇用状況等報告」によると、継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度等)を導入している企業が多くなっています。

Aさんの勤務先も継続雇用制度(再雇用制度)を導入しており、60歳で定年を迎えた後、1年契約を更新することで原則として65歳まで勤務することが可能です。ただし、再雇用時には労働条件の変更が行われ、賃金は下がります。