他人に対するよけいな詮索は「トラブルのもと」

「空間」の大切さは、自分の身のまわりだけではありません。人間関係でも同じです。

たとえば、私の学生時代からの友人は、長いつき合いを重ねてお互いをわかり合っているため、何でも言えたり、聞いてもらえたりします。損得抜きの話もできるでしょう。しかし、中高年になってからの知人の中には、距離を保ってつき合ったほうが、お互いのためにいいという相手がいるかもしれません。

年齢を重ねた人は、それぞれに自分の世界を持っています。そして、他人には立ち入ってほしくない部分もあります。ところが、親しくなったことをアピールしたいのか、ただのお節介なのか、他人の領分にまで口を出したがる人がいます。悪気はないのかもしれませんが、それだけに始末が悪いのです。

アパートを借りて、ひとり暮らしを始めた女性の話です。ご近所に挨拶してまわったときに、ある女性から、「どんな仕事をしていたの?」「だんなさんはどんな人だった?」「お子さんはどこに住んでいるの?」など、あれこれと質問をされて戸惑ったそうです。

「適当に返事をしておいたのですが、失礼だったかしら」と不安そうにしていたので、「大丈夫ですよ。初対面の相手に根掘り葉掘り尋ねるほうが、よっぽど失礼ですよ」と話しました。

普通の人なら、はっきりしない答え方をすれば、「あまり詳しい話は聞かれたくないらしい」と気づくものですが、なかには、遠慮のない人もいます。

そんなときは「今から出かけますので……」と逃げるにかぎります。もしかしたら「あら、どちらへ?」と食い下がるかもしれませんが「ちょっとそこまで」と、やはりいい加減に答えておけばいいのです。

いずれにしても、そういう人とは、ある程度の距離をおいたほうが賢明でしょう。逆に「他人に対するよけいな詮索は人間関係のトラブルのもと」と自分自身にも言い聞かせておきましょう。