現役時代の栄光を忘れられず、周囲の人たちを見下してしまい地域の仲間をつくることができない…。そんな人たちの足かせになっているのが「プライド」です。今回はシニア世代の名医・保坂隆氏の著書『お金をかけず気軽にできる 「ひとり老後」が楽しい77の習慣』(KADOKAWA)から、老後の人間関係で気をつけたいことや、プライドを捨てることで得られることについて解説します。
年を取ったら、つまらないプライドは捨てること
ある小説に、主人公が退職後も「自分は大手企業の役員だった」というプライドが捨てきれず、偉そうな態度で周囲の反感を買ってしまうという話が出てきます。これと同じような人は、想像以上に多いようです。
今まで培ってきた経験や技術を周囲に伝えるというのは、とてもよいことですが、わざわざプライドをひけらかすというのはいただけません。
たとえば、地域のイベントやボランティアに誘われたときなどです。新しい人間関係のためには、こうしたものに積極的に参加するといいのですが、かつてのプライドが捨てきれないと、「彼らとは格が違うから」とか「なぜ、私がタダ働きをしなければならないのか」などと考えます。なかには、それを口に出す人もいるようです。
こんな理由で誘いを拒絶するのは好ましくありません。せっかく差し出された手を振り払ってしまったら、次の誘いはなかなかないでしょう。いざというときに力になってくれる人がいないのは、孤独力が高いというより、もはや単なる「孤独な老人」です。邪魔なプライドなど捨てて、「来る者は拒まず」の精神で、誘われたイベントに出かけてほしいものです。
あなたは、プライドの正体を知っていますか? プライドの高い人は「プライド=崇高なもの」と思い込んでいることが多いようですが、心理学的にみると、じつは間違い。プライドが高すぎる人は、自分に自信がなく、不安を感じています。
比較的に、プライドの高い人は「自慢話が好き」という印象があると思います。これも、自分に自信がないために、自らの強さを強調することで、自分自身を守ろうとする反応です。「弱い犬ほどよく吠える」とよく言いますが、まさにこれなのです。
「私はプライドが高いから……」とか「なかなかプライドを捨てられない」という人は、じつは弱い人間なのかもしれません。それがわかったら、つまらないプライドなんかにはこだわらなくなるのではないでしょうか。
保坂 隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長