年をとるにつれて「年をとったら粗食で十分だし、そのほうが体によい」と、あっさりした食生活に切り替える人は多いでしょう。しかし、『老害の壁』(エクスナレッジ)の著者・和田秀樹氏高齢者は、これを「迷信」と切り捨てます。和田氏が掲げる70代以降の“理想の食生活”について、詳しくみていきましょう。
高齢者こそ、肉を食え…70代以降は「メタボのほうが長生き」な理由【東大卒の医師・和田秀樹が熱弁】
心配すべきは「メタボ」より「栄養不足」…“太め”のほうが長生き
高齢者でも体重が増えることをものすごく気にする人がいます。これはメタボ健診の影響でしょう。メタボ健診で腹囲を測定して、少しでも太っていると判定されると、食生活の改善などの指導が行われるからです。
宮城県で5万人を対象にして行われた大規模調査によると、やせ形のほうが、やや太めの人よりも6〜8年早く亡くなることが明らかにされています。
また、アメリカで、29年間にわたって追跡した国民健康栄養調査によると、もっとも長生きなのは、太りぎみとされるBМI(体格指数)が25〜29.5の人で、BMI18.5未満のやせ型の人は、その2.5倍も死亡率が高いことがわかりました。
BMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値です。例えば、身長170cm、体重80kgの人なら、80÷(1.7×1.7)=27.68(小数点第3位以下切り捨て)となります。体重が80kgというと、やや太めの印象を持たれるかもしれませんが、BMIでいうと、もっとも長生きできる数値に収まっていることになります。
しかし、日本では、BМI25〜30となると、肥満とみなされ、ダイエットを推奨されることになってしまいます。
アメリカのように心筋梗塞で死ぬ人がもっとも多い国なら、メタボ健診は有効かもしれませんが、日本はがんで死ぬ人がもっとも多い国です。無理に体重を減らして、たんぱく質やコレステロールまで減ってしまえば、免疫力も低下しますし、血管も脆くなって長生きできなくなります。
私は70代になったら、むしろ栄養不足に気をつけるべきで、栄養のとりすぎについては過敏になる必要はないと、以前から繰り返し言っています。
体重をコントロールするにしても、少々太めを目標にしましょう。BMIなら25未満にならないようにします。
和田 秀樹
精神科医
ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表