白内障は水晶体が白く濁り視力が低下する病気で、原因もさまざまです。50代以降になると多くの人に症状が現れるなど、めずらしくない病気であることから、「白内障の手術は簡単」というイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし、眼科医の窪田良氏は「決して簡単な手術ではない」といいます。本記事では、窪田氏の著書『近視は病気です』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、白内障の手術についての見解をご紹介します。
少しずつ視野が欠けていく「緑内障」
白内障と並んでよく知られた病気が「緑内障」です。緑内障は、日本人の失明の原因の第1位となっています。目の圧力(眼圧)が相対的に高まることで、網膜から脳に通じる神経が一つひとつ死んでいってしまう病気です。あるいは眼圧が正常でも、視神経が耐えられる眼圧が低いことでも起こります。
適切な眼圧を維持することはとても大切な一方で、眼圧が高くなりすぎてパンパンになってしまうと、今度は圧力で神経節細胞が死んでしまいます。その細胞が死んでいくプロセスで、独特の視野狭窄を起こしていきます。
40代以降は、そうでなくても神経節細胞の圧力に対する耐性が弱くなってくるので、通常の圧力でも死んでいくような状態になることもあります。正常眼圧緑内障と呼ばれており、高い報告だと、日本の患者さんの90%以上がこれだとされています。
緑内障のタイプやステージにもよりますが、多くの緑内障はじわじわゆっくり進む病気です。自分の目が少しずつ、10年、20年とかけて視野が狭くなっていきます。
これはいいことでもあり、悪いことでもあります。早く発見さえすれば、適切な治療で一生失明することなく過ごせます。逆に言うと、本当に少しずつ視野が狭まっていくため、気づきにくいのです。自覚症状が出たときには、もう失明直前だったというケースも、まれですがあります。
驚かれるかもわかりませんが、片目の視力がかなり低下していても気づかない人もいます。通常は、両目でものを見ているからです。片目が見えにくくなっていても、脳は像を合成してつじつまを合わせてしまうのです。
久しぶりに一眼レフカメラのファインダーを片目で覗いたら、知らない間に片目が網膜剝離になってしまっていて、視力が低下していて見えなかった……そんな方もいます。