白内障は水晶体が白く濁り視力が低下する病気で、原因もさまざまです。50代以降になると多くの人に症状が現れるなど、めずらしくない病気であることから、「白内障の手術は簡単」というイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし、眼科医の窪田良氏は「決して簡単な手術ではない」といいます。本記事では、窪田氏の著書『近視は病気です』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、白内障の手術についての見解をご紹介します。
白内障手術は「簡単」ではない
日帰り手術も一般的になってきて、「白内障の手術なんて簡単だ」と言われることもありますが、実は技術的には簡単ではありません。
内臓のオペでも、広い視野が取れる開腹手術に比べて、細い管のような装置を小さな穴から入れる腹腔鏡手術は医師にとって難しいものです。同じように、小さな傷口から管を入れて水晶体を乳化吸引するには、熟練された高度なテクニックが必要になります。
細い針のようなノズルがついた装置で、水晶体の袋を残して中身だけ吸引しなければなりません。袋を残さないと人工レンズが入れられないからです。残した袋に、小さく折り畳まれたレンズを、細いパイプ状のインジェクターで移植します。ただ、超音波のかけ方が強すぎるとか、患者さんの体質によっては袋が壊れてしまうこともあります。
袋が壊れた場合は、人工レンズを直接、目に縫いつけて固定しなければならず、手術時間も長くなってしまいます。破れた袋から水晶体の一部が硝子体に落下したりすると、より大がかりな手術をして除去する必要もあります。
ちなみに後発白内障といって、水晶体の袋が手術後に濁ってしまい、レーザーで切開しなければならないことがあります。切開したあとは、普通は再び濁って見えなくなることはありません。