今年からスタートした「新NISA」をきっかけに、いわゆる“ビギナー投資家”が急増しています。資産運用への関心が高まるのはいいことですが、知識が乏しいにもかかわらず、金融機関に勧められるがまま投資をはじめると、あとで「大後悔」することも……。定年退職後、銀行の営業マンの勧めで「毎月分配型投資信託」を購入したAさんの事例をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
銀行に騙された!退職金2,500万円、年金月19万円の65歳男性〈毎月分配型投資信託〉を勧めてきた営業マンに憤慨も…「勘違いでした」と猛省したワケ【CFPの助言】
「毎月分配型」の投資信託、やめるべき?
なお、投資した運用成果は、決算期ごとに(毎月分配型なら毎月)発行される「運用報告書」などで確認できます。Aさんは、この5年間で毎月約5万円ずつ、合計約300万円の分配金を受け取っていました。
これは、銀行員のいうとおり、年金受給までの「つなぎ資金」の役割は果たしていたといえます。
「毎月分配型投資信託」のデメリット
しかしAさんは、毎月の分配金を「普通分配金」で受け取ることもありましたが、「元本払戻金」で受け取ることもありました。基準価額も1万円前後で推移しており、投資した1,000万円を割り込む可能性もあります。運用成績がいいとはいえません。
毎月分配型の投資信託は、利益が上がっても投資家に分配されてしまい、運用資金には回り辛く、投資のうまみである複利効果を期待することは難しい商品です。
また、目論見書によると、購入時の販売手数料や保有期間中の信託報酬、それに換金(売却)時の信託財産留保額といった費用が、他の投資信託より高めに設定されています。これは、Aさんの購入した商品だけでなく、毎月分配型の投資信託全般にいえることです。
役目を終えた毎月分配型投資信託
Aさんにとってはこの5年間、毎月分配金が受け取れた「毎月分配型投資信託」は、前述のとおり「つなぎ資金」の役割は果たしており、有益な投資信託でした。
しかし、65歳と年金が受給できる年齢になったこともあり、筆者は「ここは利益を確定して、その資金でほかの運用方法を考えてもいいのではないでしょうか」と提案しました。
お金に関する知識や判断力は、老後を考えるうえで必要不可欠です。Aさんは「最後は俺が決めたことだし、一方的に恨むのは筋違いだよな」と、自らの勘違いを反省。筆者とともに、老後の資産運用方法について新たに検討することにしました。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員