ピーク時から年収が「4割以下」まで減った61歳会社員

地方都市の小さな会社の営業企画部に勤めるAさん(61歳・男性)は、定年退職を迎えた後も引き続き同じ会社で継続雇用で働いています。仕事の実力はまだまだ年下の同僚に負けているとは思っていませんが、切ない現実がAさんを追い詰めつつありました。

Aさんは20代から今の会社で働きはじめ、順調に昇進しました。50歳のときには部長職となり、年収は1,000万円に到達。忙しいながらもやりがいを感じ、待遇にも満足していたといいます。

ところが、Aさんを避けては通れない試練が待ち構えていました。それが「役職定年」です。55歳になると役職定年になるのが会社の通例で、部長職を外され実質的な降格と共に収入ダウンのお達しを受けたのです。提示された年収は2割減の800万円でした。

Aさんの家族は同い年の妻と子ども1人ですが、子どもは当時25歳で独立済み。教育費など家計負担が大きいピークの時期は過ぎていました。年収が200万円も下がったことに不満はあったものの、自分の先輩も同じように役職定年を受け入れていたのを以前から見てきたAさん。妻と2人であれば800万円でも十分生活できる範囲だと自分に言い聞かせて、その後も手を抜くことなく仕事を続けていたのでした。

しかし、Aさんが58歳になったときに2回目の試練が訪れました。会社の業績不振によってボーナス支給はゼロに。大幅な賃金カットを余儀なくされ、年収は800万円から540万円に大幅ダウンとなりました。それでも長年勤めた会社への恩義と年齢的なことを考え、Aさんはこのまま今の会社で働く選択をしました。

そして60歳で定年退職を迎え、継続雇用を選択。しかし継続雇用後は年収が下がるのが一般的です。Aさんも例外ではなく、提示された年収は360万円でした。つまり、現役時代に最も給料をもらっていた54歳の年収1,000万円から、今は年収360万円まで落ち込んでしまったのです。

頼みの綱の退職金はというと、Aさんの会社には退職金規定がなく、業績不振の影響で金額は1,000万円程度と想定よりも少ない金額に。住宅ローンの残債に充てると手元にはほとんど残らないという状態でした。

さすがに老後の生活が不安になったAさんは、古くからの知り合いのファイナンシャルプランナー(以下、FP)に相談することにしました。

「役職定年、経営不振、継続雇用と3段階でこんなに給料が下がるとは思いませんでした。年金をもらえる65歳までは生活のために働かざるを得ないけれど、若手社員と変わらない給料で働くのは正直モチベーションを保つのに苦労していますし、長い老後を考えると夜もあまり眠れません」とのこと。

Aさんの相談を聞いたFPは「まずは社会保険制度の一つである『高年齢雇用継続給付金』の受給ができるか確認しましょう」と、伝えました。