昨今、高齢者の住まいとして有効な選択肢になりつつある「老人ホーム」。入居の理由はさまざまですが、終の棲家として夫婦で入居を決断するケースも珍しくありません。しかし、夫(妻)が先に亡くなることで、家計が悪化。退去せざるを得ない事態に直面することもあるといいます。みていきましょう。
年金夫婦で〈月33万円〉も夫死去で年金激減、〈老人ホーム費用〉もままならず…妻「どう生きていけばいいのか」 (※写真はイメージです/PIXTA)

80歳で夫死去…残された妻が受け取る「遺族年金額」に衝撃

実はこの老夫婦の老人ホーム入居までのストーリー、実は5年ほど前の話。現在はどうなったかというと、いまから1年ほど前に、80歳で夫は死去。そして今年、80歳となった妻は一時的に長男宅に身を寄せているとか。

 

老人ホームの退去に至ったのは、費用面での不安。夫が亡くなったことで、1人部屋に移ることになりましたが、費用はそれまでの半分とはいかず、月28万円ほど。

 

それに対し、妻が受け取る年金額は、自身の年金月14万円に、夫の遺族年金が2万円で合計月15万円ほど。手取りは月13.5万円ほどになり、月14.5万円の手出しは最低限必要になります。

 

本来、遺族厚生年金は「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」となり、9万円強となる計算。しかし「65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある場合、老齢厚生年金は全額支給、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる」というルールのため、妻の老齢厚生年金「月7.2万円」と、夫の遺族年金「9.15万円」との差額、「約2万円/月」が支給と、思ったほど年金を受け取ることができませんでした。

 

結局、夫が元気だった頃よりも「月2.5万円」の支出増。以前であれば「これくらいの出費増であれば」と許容していたかもしれません。しかし昨今の物価高、老人ホーム費用の値上げという話もあり、ここで許容してしまっては生きている間に「貯蓄(自宅の売却益)」を使い果たしてしまう恐れが。

 

――どう生きていけばいいのか

 

そんな不安の前に、結局、老人ホーム退去の選択肢しかなかったといいます。

 

こうして身を寄せることになった長男宅。家族は「いっそのこと、同居しませんか?」と言ってくれるものの、どうしてもお互いに気を遣ってしまうもの。気疲れするよりも別々に住んだほうがいいと、再び、身の丈にあったホームを探そうとしています。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior『高齢期の住み替え調査』

日本年金機構『遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)』