多くの人が不安を抱える「親の介護」問題。内閣府が行った調査(高齢社会白書:平成30年)では、73.5%が自宅での介護を望む一方、介護する側の負担も大きいことから、近年、老人ホームなどの介護施設を利用する人も増えています。しかし、介護施設も「入居できれば安心」とは限りません。本記事では、Aさんの事例とともにに介護施設の注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。
「ごめんなさい、もう無理」月収29万円・51歳長女、年金月16万円・81歳父を断腸の思いで〈特養〉へ見送るも…わずか1年後、退去せざるを得なくなった〈施設長直々の電話〉【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本の高齢者割合と介護の実態

内閣府「令和5年版高齢社会白書」によると、令和4年10月1日現在、65歳以上人口は3,624万人となり、総人口に占める割合は29%となりました。つまり、日本の人口における65歳以上の人口は29%となっており、およそ3.4人に1人が65歳以上という水準となっていることがわかります※1。今後も少子高齢化は進み、令和19年には33.3%、令和52年には38.7%に達すると予想されています。高齢化が進むなか、介護を受ける方も増えています。

 

厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護(要支援者)数は、令和3年度末現在で約690万人となっています。要介護(要支援者)数は、介護保険制度が始まった平成12年から増加を続け、今度も依然として増加が見込まれています※2

 

代表的な介護施設の種類と特徴

日本では主に要介護者に向け、介護保険サービスとして利用できる介護施設があります。民間の老人ホームに比べると比較的費用が安く利用できるメリットがあります。

 

代表的な施設は下記のとおりです。

 

■特別養護老人ホーム

常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対し介護を提供する施設

原則、要介護3以上の方を対象、入居生活がメイン

 

■介護老人保健施設

介護を必要とする高齢者の自立支援を目的とした施設

要介護1〜5の方を対象、入院治療ではなくリハビリ中心

 

■介護療養型医療施設

比較的重度の要介護者に対して医療処置、リハビリを行う

 

Aさんは特別養護老人ホームに父を入所させることに決めました。Aさん親子は関東の郊外に住んでおり、申し込みから数ヵ月で希望の施設へ入所が決定。比較的スムーズに入所が決まりました。無事に父を施設へ送り出し、1人の生活となり、ほっとしたような、寂しいような感情が押し寄せます。

 

「悲しんでなんかいられない。まずは家のことをきっちりもとどおりにしないと。自分の生活もあるんだから!」一人暮らしの生活に戻ったAさん。

 

それから時は流れ、ちょうど父の入所から1年が経ったころ。特養からAさんのもとへ連絡がありました。昨今の人手不足の影響もあり、施設長から直々の連絡でした。