高齢化の進行とともに、希望すればいつまでも働けるような環境が整いつつありますが、本音を言えば働かずに、悠々自適な生活を送りたいと誰もが思うもの。しかし、いつまで働けばいいのか終わりがみえない人も。みていきましょう。
もう疲れました…〈月収28万円〉63歳の再雇用サラリーマン、91歳の母に抱く「どす黒い感情」 (※写真はイメージです/PIXTA)

長生きの要介護の親、介護が終わった先が見えない子

会社の介護への無理解に苦しめられたという男性。「本当に親の介護なの?」と、無神経に聞いてくる上司には、本当に腹が立ったと振り返ります。

 

厚生労働省『仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 令和3年度厚生労働省委託事業』によると、「介護のことについて、上司や同僚に話したり、相談したりすることができる雰囲気が職場にあ ると思うか」と聞いたところ、「思う*1」が49.8%、「思わない*2」が44.8%。ほぼ同水準です。

 

*1:そう思う、まあそう思うの合計

*2:あまりそう思わない、思わないの合計

 

また会社には、介護に携わる家族のためのさまざまな制度があり、利用すれば介護も楽になっただろうと男性。しかし、なかなか利用できる環境ではなかったと振り返ります。

 

たとえば同調査で「介護休業制度を利用しない(しなかった)理由」を聞いていますが、最多は「勤務先に介護休業制度が整備されていない」で 43.2%。「代替職員がいない」30.6%、「勤務先の介護休業制度を知らない」26.5%、「業務量が多い、仕事が忙しい」26.0%と続きます。

 

制度が整備されていなかったり、自身が知らなかったりするのは仕方がないですが、せっかく制度があっても、人手不足で他の人に迷惑がかかる状況であったり、仕事が多くて休めなかったりというケースも珍しくないようです。

 

施設に入ってもらうという選択肢もありましたが、母が嫌がったこと、また男性としても女手ひとつで大学まで行かせてくれた母を施設には入れたくないという想いが強く、結局、定年までの10年間、外部の手も借りながら、なんとか仕事と介護の両立をしてきたといいます。

 

定年を迎え、再雇用となり3年。母は90代に突入し、いまなお、介護と仕事の両立の日々が続いています。ただ最近考えるのは、「いつまでこの生活が続くのだろうか……」という絶望感だといいます。

 

――介護生活が始まって13年……もう疲れました

――母の年齢的に、こんな生活もいずれ終わりが来ることは分かっている

――そんな日が早く来てくれたら、と思ってしまう

 

なんともヒドイことを考えてしまう自分に嫌気がさす、と男性。さらに追い打ちをかけるのが介護の先です。母が長生きすれば長生きするほどかかる「介護・医療費」。それは結構な負担で自身の老後のための貯蓄ははっきりいって心許ない状況だとか。定年後、非正規社員として働いているなか、これから大きく貯蓄が増えるとは考えられません。そのようななか母と同じように長生きしたら、貧困のなか生きていかないといけない……そんな未来を想像するだけでゾッとするといいます。

 

男性のように、長生きのリスクに直面する人は、今後ますます増えていくことは確実。長生きをリスクにしないためにも、健康寿命を延ばすこと、さらに早めに資産形成をスタートさせることは必須です。

 

[参考資料]

株式会社パーソル総合研究所『働く1万人の就業・成長定点調査』

厚生労働省『仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 令和3年度厚生労働省委託事業』