退職金が出る会社でiDeCoにも加入している場合、これらを受け取るタイミングによっては、思わぬ課税や社会保険料の増額を受けるため、注意が必要です。現在59歳で定年退職を目前に控えたAさんの事例から、退職金やiDeCoの「適切な受け取り方」をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
「退職金」と「iDeCo」の受け取り方で悩むAさん
Aさんは現在59歳です。大学卒業後新卒で入った会社に勤めたあと1度転職し、その後は現在の会社に落ち着きました。来年でちょうど勤続30年になります。現在の年収は720万円ほど。
Aさんには2歳年下の妻と3人の子どもがいます。子どもはすでにそれぞれ独立しており、現在は戸建て住宅に妻と母3人で暮らしています。
Aさんは、来年定年退職して退職金を受け取り完全リタイアするか、いまの会社で再雇用してもらい65歳まで働こうか迷っていました。ただし再雇用となると、年収は現在の半分ほどとなります。
またAさんは、約20年積み立てているiDeCoの利益を確定する方法も迷っています。そこで、Aさんは自作したライフプランについて客観的な意見が欲しいと、筆者のところを訪れました。
Aさんが作成したライフプランを見た筆者の感想
節約を心がけてきたこともあり、Aさんが持参したプランは、定年でリタイアしても65歳まで働いても、一見して老後の生活は安心できるように見えました。しかし、退職金とiDeCoの受け取り方には、一考の余地がありそうです。
Aさんの勤務先は、「確定給付企業年金」を採用しており、Aさんが定年まで勤務すると、退職一時金が約1,800万円受け取れることになっています。
また、40歳のころからiDeCoに毎月1万円ずつ投資しているAさん。来年で投資額は240万円になります。現在の平均利回りが約5.0%であることから、約488万円の資産があることになります。
早めにiDeCoの利益を確定したいなら、「スイッチング」がおすすめ
iDeCoが受け取れるのは1年後の60歳からですが、Aさんは「現段階で利益を確定したい」と言います。そこで筆者は、いままでの外国株中心の投資信託の運用から、元本が確保される定期預金への買い換え(=スイッチング)をおすすめしました。
ただし、運営管理機関により異なりますが、スイッチングをするには、スイッチング自体の手数料や売却する商品の信託財産留保額といった手数料が必要なケースもあります。
なお、iDeCo口座の運用益は前述のように非課税です。