健康を維持するために、日常的に食べておきたい「重要な食材」があります。そのうちのひとつが「ヨーグルト」で、なかでも「カスピ海ヨーグルト」には、現代人にとって大事な成分が含まれている、とカスピ海ヨーグルトを初めて日本に持ち込んだ京大名誉教授の家森幸男氏はいいます。家森氏の著書『80代現役医師夫婦の賢食術』(文藝春秋)より、詳しくみていきましょう。
ヨーグルトは「スローカロリー」な食品
ここで「血糖値」について、説明しておきましょう。
血糖値は血中のブドウ糖濃度を指し、食事が消化されブドウ糖として血中に取り込まれると上昇します(血糖値の上昇)。こうして血糖値が上がると、すい臓からインスリンが血管内に分泌され、ブドウ糖が筋肉や脂肪などに取り込まれるように働き、血糖値が下がります。
インスリンの分泌が低下したり、効果を発揮できなかったりすると血糖値のレベルが常に高い状態になり、「糖尿病」となります。健康な人はインスリンが血糖値をコントロールしてくれているのです。
ところが、空腹時は血糖値が低い人でも、喉が渇いたら甘い清涼飲料水を飲み、お腹がすいたら甘い菓子パンを食べるような食生活をしていると、食後に血糖値が急激に乱高下するようになります。
これが「血糖値スパイク」と呼ばれる状態で、糖尿病のように常に血糖値が高い状態以上に、健康によくないことが最近の研究で分かってきています。
血管の内皮細胞を培養し、血糖値を大きく変動させると、血管の細胞に炎症が起こってくるのです。その炎症が起こると、インスリンが効きにくくなります。それが重なると、血糖値がどんどん上がり、糖尿病になります。
また、急激に上がった血糖値を下げようと、インスリンが一度に大量に出ると、小型の脂肪細胞が脂肪をため、次第に肥大化していきます。肥大化した脂肪細胞は、血圧を上げる悪玉物質を作るので、高血圧になりやすくなります。また、脂肪細胞が肥大化すると、アディポネクチンという、脂肪から放出され炎症を抑える善玉ホルモンも出にくくなります。
要するに、食事による血糖値の変動は、なるべく緩やかなほうが健康によく、粘り気の強いヨーグルトがそれをかなえてくれるのです。
[図表]をご覧ください。食べた物で血糖値の変動を測った実験があります。牛乳にブドウ糖を加えた場合と、ヨーグルトとおにぎりの場合です。
どちらも食べてしばらくすると血糖値が上がりますが、「ヨーグルトとおにぎり」はその上昇が低く、その後、血糖値も緩やかに変化していきます。このグラフにはないですが、牛乳とおにぎりを食べた群と比べても、血糖値やインスリンの上昇は緩やかで、低下も緩やかなのです。
このように、ヨーグルトは血糖値の乱高下を抑え、緩やかに上げる「スローカロリー」の代表的な食品といえるのです。
家森 幸男
武庫川女子大学健康科学総合研究所
国際健康開発部門長