今年(令和6年)1月1日から施行された相続税及び贈与税の税制改正。この改正によって、生前贈与のひとつである「暦年贈与」について、節税効果を果たさなくなるケースが発生してしまうようになりました。本記事では、相続税対策を進める76歳のAさんのケースを例に、FPの松本耕太郎氏が税制変更後の生前贈与について解説します。
76歳男性「知りませんでした…」毎年110万円ずつ贈与する“定番の相続税対策”がムダに終わる危機に冷や汗【FPが助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「暦年贈与」・「相続時精算課税制度」どんな人が選択するといい?

2つの制度を使う際の判断基準を整理して見ていきましょう。

 

■暦年贈与を使った方がいい人

・相続人が多い(子や孫が多い)

暦年贈与の110万円の基礎控除は相続人ごとに枠があるため、相続人が多ければ多いほど効果は高くなります。


・相続が発生するまで時間がある人
7年に持ち戻しの範囲が拡大されたとはいえ、それ以前に関しての贈与は問題なく対象になります。そのため相続が発生するまで時間がある(=被相続人が若い)場合は、暦年贈与は効果的であると言えるでしょう。

 

■相続時精算課税制度を活用した方がいい人

・相続財産が基礎控除の中で収まる人
相続時精算課税制度の特徴として、贈与したものが相続時に相続財産に加えることになるので、基礎控除内で収まる場合は生前に2,500万円まで非課税で贈与ができます。

 

・被相続人が高齢の人
暦年贈与の時と逆になりますが、被相続人が高齢だと贈与をする期間が短くなるので、持ち戻しリスクが高くなってしまいます。相続時精算課税制度の基礎控除110万円は持ち戻しの対象外になるので効果的です。

 

相続税対策=暦年贈与という方程式が通用しないケースに注意しよう

今回のAさんのように、インターネットで得た情報を鵜吞みにして、何も考えずに暦年贈与をしていたら、無駄に終わってしまったかもしれません。令和6年以降の相続は、税制改正の影響で相続税対策=暦年贈与という方程式が通用しない可能性があるということをぜひ覚えておいてください。

 

「備えあれば患いなし」ということで、相続は早め早めの対策を心掛け、信頼できる専門家に相談しながら進めてみてはいかがでしょうか。

 

松本 耕太郎

ファイナンシャル・プランナー