質問と逆質問に備える
当たり前のことですが、面接はどの段階でも「コミュニケーションが取れる人物か?」を最重要視します。まるで対話のように流れるがまま会話を進められれば最高ですが、初対面の面接官とはさすがに難しいので、
・結論ファースト。
・シンプルに話せ。
・具体的な取り組みを話せ。
の3つだけ意識してください。
面接でのNG行為は、面接官をコントロールしようとすることです。回答に意外性を持たせる、いつも以上に大げさな表現をする、すべてを伝えずに関心を持ってもらおうとするetc…そうやって「面接官から次の質問を引き出す回答をしよう」なんて自称キャリアの専門家・就活のプロの嘘テクニックに騙されないように。面接官は必ず見破ります。自分を良く見せるために印象操作しようとしているな、と。聞かれたことに素直に答える。これでOKです。
時には答えにくい、意地悪と感じる質問もあります。それでも何か答えないと「人の話を聞いていない」、「準備が足りない」、「コミュニケーションに難あり」と断じられかねません。全力で食らいつきましょう。
ここでは、答えにくい質問の代表格2つと、逆質問について解説します。
面接官:「ご希望の部署は?」「もしご希望と違う部署に配属されたら、どうしますか?」
二次面接で聞かれることの多い、セット質問です。つい内定が欲しくて「どの部署でも構いません、頑張ります!」と力強く言い切ってしまう、あるいは、「希望の部署に配属してもらえるように、配属された部署で頑張ります!」と希望を伝えずに熱意だけアピールしてしまう。これは最適な答えではありません。その気がなくても「与えられた場所で花を咲かせます!」と断言しろ、等とアドバイスしている自称キャリアの専門家・就活のプロは採用のプロセスを理解していません。いくら専門性を問われない総合職での募集でも、大半の企業は配属先と受け入れ可能人数を想定しながら採用活動を行っていますので、就活生の希望の部署は事実上参考程度でも確認しておきたいのです。参考にはしますから。
■「希望の部署でやりたいこと」と「希望する理由」を明確に示す
就活生に有利な売り手市場である現在では、本人の希望は忌憚なく話してほしい、と願う企業がほとんどです。希望がすべて通るわけではありませんし、会社全体で人員計画を策定していることから将来的に希望が叶う保証もありません。しかし、希望の部署でやりたいことと希望理由を明確に示すことで、志望度と期待値のアピールにつながります。
「私の希望は〇〇部署です。もし希望が通りましたら~(自己PRや志望動機につなげる)」
と、嘘偽りなく話しつつ、熱意を強調しましょう。希望の部署がある、ということは部署単位まで企業分析をしっかり行ってきた証拠ともなりますので、必ず用意してください。
■「希望が通らなくても配属部署で努力できる」というスタンスで回答
次に高頻度で「希望通りに配属されなかったらどうするか」と聞かれますので、その場合は、
「配属された部署で貢献できるよう頑張ります。私は〇〇部以上に「御社自体」に魅力を感じています。その魅力とは~(志望動機につなげる)。もちろん、〇〇部が第一希望ですが、希望が通らない場合でも御社に貢献できるよう努力します」
と、希望が通らなくても配属部署で努力できる、というスタンスで回答してください。もちろんこれは内定に主眼を置いた場合であり、「希望通りでなければ入社したくない」レベルまで部署単位での熱意が育っているのであれば、正直に伝えてください。その状態で内定を得ても希望通りの部署に配属されなかったら、お互い不幸になるだけです。熱意を持って意欲的に仕事に取り組める人、それが面接で評価される「一緒に働きたい人柄」ですから。
面接官:「内定を出したらご入社いただけますか?」「他社の選考状況は…?」
最終面接の最後に聞かれることの多い、セット質問です。つい内定が欲しくて「御社が第一志望です!」と、どの会社にも力強く言い切ってしまった。次に他社の選考状況を聞かれて「御社以外は今日すべて断ります!」と熱意をアピールすべく噓をついてしまった。これは最適な答えではありません。その気がなくても「御社から内定を得られたら、その時点で就活やめます!」と断言しろ、等とアドバイスしている自称キャリアの専門家・就活のプロは時代遅れです。それは企業側が圧倒的に有利だった頃のお約束ごと、就職氷河期の遺物です。
■第一声で言うべきは「内定を頂けたら御社に決めます」
就活生に有利な売り手市場である現在では、他社の選考状況も含めて正直に話してほしい、と願う企業がほとんどです。最終面接は役員レベルですので、入社の意思や熱意が伝わらなかったらお見送り、ではありますが、だからといってその気もないのに嘘をつかれると、企業側にとっても判断に迷いが生じます。就活生の熱意は参考程度ではなく、決め手になり得るからです。志望度のアピールにつながるどころか、決め手です。もちろん第一志望の企業であるなら「もう就活は終わりです!」と言い切って構わないのですが、すべてのエントリー企業の選考が終わってからでないと、どの企業の内定を承諾しようか決められないことがほとんどです。
そこで、どの企業に対しても、
「内定を頂けたら御社に決めます」
と、第一声では簡潔に言い切ってください。企業は採用活動に膨大なお金、時間をかけています。入社意思の確認が取れないまま内定を出すことはできません。また、ミスマッチから早期退社へとつながってしまえばすべてが水の泡となってしまうので、そうならないために少しでも入社意欲を疑われる回答には決して内定を出せません。まずは、期待に応えるように必ず「当たり前ですよ」という雰囲気で回答してください。その後に、志望動機を続けて熱意をアピールすればOKです。
■第一志望でなくとも嘘をつかず、それでいて「お見送り」にならない回答を
次に高頻度で「他社の選考状況は?」と聞かれますので、その場合は嘘偽りなく、しかしツッコミどころもないように、
「正直にお話すると、〇〇の会社と●●な理由で迷っていますが、御社の△△が□□なので、御社からの内定を最優先にしたいと考えております」と話しつつ、さりげなく企業分析の成果も押し出してみましょう。これなら第一志望でなくても嘘は言っていませんので、心苦しさもないと思います。
「まだ迷っています」と言い澱んだ時点でお見送りになるのが最終面接ですし、嘘偽りは顔に出ます。声に出ます。立ち居振る舞いに出ます。自信を持って熱量高く自分らしさを表現するためにも、嘘偽りなく言い切ってください。正直に自分の状況と想いを伝えられる人、それが面接で評価される「素直で良い人」ですから。
面接官:「最後に、何か質問はありますか?」
■逆質問タイムは選考に影響しない
これが逆質問に対する結論です。どの面接でも、最後に与えられる逆質問タイムで「人事が唸る逆質問」、「思わず内定を出してしまう逆質問」、「マジで評価が高かった逆質問」なんてものはこの世に存在しません。断言しますが、それまでの面接の流れで「これはお見送り」、「これは通過」と面接官が判断していた評価を、最後の逆質問だけで覆すことはあり得ません。逆質問の都市伝説を流布する自称キャリアの専門家・就活のプロに騙されずに、志望企業の社員である面接官に聞いてみたい、その会社にまつわる「興味・関心」を確認する程度にしましょう。
もちろん、「興味・関心」ですので、基本的には何でも構いません。社会人の先輩となる様々な企業の方々へ、率直に質問できる機会はそうありません。せっかくの逆質問タイム、自分と企業とのマッチ度を測るためにも、必要な情報を取りに行く質問等で有意義に使いたいものです。
ただ、もったいないと思ってしまう、できれば控えるべき逆質問が2つあります。
①調べれば簡単にわかることを聞く。
②今日の面接についてフィードバックをください、と依頼する。
①については、給料・福利厚生等の待遇面や残業時間といった「働きやすさ」が代表ですが、これらは企業分析をしていれば確実にわかることです。調べればわかることを聞いてしまうと、「そんなことも調べていなかったんだな」と、ガッカリ感を面接官に与えかねません。控えましょう。
可能な限り調べた結果、どうしても曖昧な部分が残っている場合は、「働きやすさ」以外の「働きがい」や「働きかた」も含めて、遠慮なく質問してください。認識違いからの「こんなはずじゃなかった」がお互い最も不幸な結果になる原因ですので、疑問や不安を逆質問で解消しつつ、業界研究・企業分析を深めてください。
②については、初デートのときに「今日のデートコース、どうだった? 他の人とのデートの参考にするから、感想をちょうだい」と聞いてくるのと同じですから、正直ドン引きです。自社の面接を踏み台にしていると捉えられてしまうので、「人の気持ちを考えていない」、「自分本位過ぎる」、「やはりコミュニケーションに難あり」と、著しいガッカリ感を面接官に与えかねません。控えましょう。もちろん、「どんな経験を積めるのか、上司や先輩からどんなフィードバックが得られるのか」みたいな、社風を知る上で大切な要素を聞いたり、今後のキャリア、「働きかた」を考えるうえでもプラスに働くフィードバックを聞いたりするのはOKですので、遠慮なく質問してください。
逆質問は企業を選ぶ判断材料に使えます。質問するのもされるのも、相手をよく知るためのものです。コミュニケーションとは会話のキャッチボール、恐れず質問に堂々と答え、また自分からも質問しましょう。そんな面接に過度の緊張を覚えることなく、楽しんでくださいね!
森田 昇(もりた のぼる)
キャリア開発・DX講師、ITベンチャー企業の外部人事部長
キャリアコンサルタント、中小企業診断士。一般社団法人リベラルコンサルティング協議会代表理事、日本能率協会マネジメントセンターパートナー・コンサルタント。
IT業界20年の経験と転職10回したつまずきを基に、キャリア開発・DXの研修講師として100社以上に研修を実施、再就職支援セミナーをハローワークで100回超開催。キャリアコンサルタントとして学生含めて約2,000人の転職と再就職・就活支援を行う。またITベンチャー企業の外部人事部長として新卒・中途採用に携わる。
著書に『売れる!スモールビジネスの成功戦略』(明日香出版社、2020年)、『年収300万円から脱出する「転職の技法」』『生涯収入を最大化する「就活の技法」』(どちらも日本能率協会マネジメントセンター)がある。