面接は「自信を持って自分らしさを伝えられる就活生」が勝つ
「自信を持って話せる」就活生に、面接官は強い魅力を感じます。それだけ企業で活躍する期待が持てますからね。将来的に、自社の商品やサービスについて自信満々にプレゼンできる、顧客に提案できる姿を容易に想像できます。面接官にそう思われたなら、間違いなく面接を突破できますよね。
逆に、不安げで、おどおどし、目が泳いだまま、質問にも曖昧な回答しかできない就活生は選ばれません。質問への回答の内容以前に、これではお見送りになってしまいます。自信を持って自分らしさを伝えられる就活生が勝つ、それが面接です。何も難しい内容を話せ、個性豊かなアピールをしろ、唯一無二を表現しろ、ではないのです。自分自身のことや、自分が考えていること、自分の想いを、相手の期待に応えてありのままに伝える。それだけです。
ただ、このありのままに伝えるには、練習量とともに、ある程度の技術が必要です。面接での暗黙のお約束事でもあるので、守らないとお見送りになります。
「受かる就活生」は話が具体的、「落ちる就活生」は話が抽象的
面接官のほぼすべてが、「自分自身の体験や考えをわかりやすく伝えられる就活生」を面接で評価します。「今の就活生の話はわかりやすかったorわかりにくかった」と評価の論点にしていたり、それで面接の合否が決まったりもします。その対応策として、次の3つの技術の練習をしてください。
・結論ファースト。
・シンプルに話せ。
・具体的な取り組みを話せ。
練習を重ねれば、自然と言語化力が磨かれます。すると、あたかも面接官が頭の中で情景をイメージできる、映像化できるほど、わかりやすく伝えることができるようになります。「ほぼ同じ内容を話しているのに、受かる人と落ちる人に分かれる」のは、この言語化力の差です。そして、この言語化力に最も必要な技術が、ES3点セットにもありました「具体的な取り組み」を話せ、です【図表】。
たとえば、「私の特徴は最後までやり切る姿勢です。理由は、ストレス耐性が高く、達成意欲が高いので、どんな困難な目標でも最後まで諦めずに取り組めるからです」といった自己PRがあるとします。結論ファーストでシンプルにも話しています。しかし、これは「わかりにくい話」です。
なぜなら、面接官が知りたいのは抽象的なものではなく、具体的な「イメージ」だからです。曖昧で抽象的な話はイメージが定まりません。数字や固有名詞を出す等して、詳細で具体的な話をしないと、伝えたいイメージが伝わりません。このイメージが湧かないのが「わかりにくい話」なのです。ですので、「具体的には~」と続けて、過去のエピソードやストーリーを伝える必要があります。これを「抽象と具体」といいます。
面接官は「信憑性があるか」、「どの程度のレベル感か」を確かめるために具体的な話を聞いてきます。ここで、いくら聞かれても細部が出てこなければ「嘘つき」、「他人の手柄にタダ乗りしている」、「あれはわしの手柄じゃサギ」と思われ、お見送りです。
また、具体的でなければレベル感が伝わりません。たとえば、「カフェで接客のアルバイトをしていました」だけでは、個人経営の純喫茶で常連客相手に深いコミュニケーションを取りながら仕事をしていたのか、駅近のチェーン店で多数のお客様を捌いていたのか判別できません。両者では使う能力も難易度も異なりますから、必ず具体的に確認されます。
ES3点セットでは具体的なエピソードを入れていたのに、いざ面接の場となると結論ファースト、シンプルに話せに囚われ過ぎてしまう。面接あるあるです。しかしこれは、練習で克服できます。敬語は多少間違えても問題ありません。それよりも、自分の言葉で具体的に自分のストーリーを簡潔かつ具体的に、そして熱を持って語れるようにしましょう。あとは、聞かれたことに素直に答えれば大丈夫ですよ!
緊張するのは当たり前。「完璧さ」よりも「自分らしさ」を大事に、ベストを尽くすこと
聞かれたことに素直に答えればいい、そう簡単に言われても緊張して言葉が出てこない。いざ本番となると独特の雰囲気に飲まれてしまう。頭が真っ白になって準備していた答えを忘れてしまう。面接を前に、不安なことは次から次へと浮かんでくるものです。私もすべて体験していますし、今でも初対面の人との面接は緊張します。あんちょこを画面内に用意できるオンライン面接でも緊張しますし、これが対面面接だと頭の中にすべて準備しておかなければなりませんから、大多数の就活生が緊張すると思います。
面接は合否をジャッジされる重要な場なので、どんなにエントリー数を増やして場数を踏んでも緊張するのは当たり前です。「緊張するのは自分だけではない」という意識を持ちつつ、緊張がどうしても取れない場合は、あらかじめ「緊張しています」と正直に伝えましょう。「第一志望のため緊張しています」だと、入社意欲も自然と伝えられます。「先に言えば説明、後で言うと言い訳」。言葉にすることで気持ちが楽になりますし、面接官と気持ちを共有することで、和やかな雰囲気にもつながります。
もちろん、本番であまり緊張しないためにも面接練習を積み重ねていただきたいですが、練習と本番では緊張感がまったく異なるのも事実です。また、緊張を感じるのは生物として「自然な反応」なので、しなくなることは決してありません。そういうものだ、と割り切って「失敗しても大丈夫」と気楽に構えるくらいでちょうどいいです。
完璧さよりも自分らしさ。面接官にも緊張は伝わっていますから、そのような状況の中でもベストを尽くしている様子は必ず届きます。「失敗した、やらかした」と自分が思っても面接に通過するのはあるあるです。大学生活ではそうそう味わえない緊張感を、少しでも楽しんでみてください。
ここで決してやってはいけないのが、「自分を良く見せよう」とすることです。「自分を優秀に見せなくては」と気負っていると、緊張で力を発揮できなくなりますし、面接官は「盛ったな」と見破ります。等身大の、ありのままの自分をアピールするのが賢明ですよ。
森田 昇(もりた のぼる)
キャリア開発・DX講師、ITベンチャー企業の外部人事部長
キャリアコンサルタント、中小企業診断士。一般社団法人リベラルコンサルティング協議会代表理事、日本能率協会マネジメントセンターパートナー・コンサルタント。
IT業界20年の経験と転職10回したつまずきを基に、キャリア開発・DXの研修講師として100社以上に研修を実施、再就職支援セミナーをハローワークで100回超開催。キャリアコンサルタントとして学生含めて約2,000人の転職と再就職・就活支援を行う。またITベンチャー企業の外部人事部長として新卒・中途採用に携わる。
著書に『売れる!スモールビジネスの成功戦略』(明日香出版社、2020年)、『年収300万円から脱出する「転職の技法」』『生涯収入を最大化する「就活の技法」』(どちらも日本能率協会マネジメントセンター)がある。