こんな定年を迎えることができたのも、家庭を支え続けてくれた妻のおかげ……そんな思いがありました。そんな妻から「おつかれさまでした」のひと言を期待していた男性。その通りの労いがあったといいますが、その後に続いた言葉に、一瞬、時が止まったといいます。
――この家の家政婦はこれで引退ね
確かに結婚して35年。特に子供が生まれてからの30年は仕事に没頭。家庭を顧みず、仕事を言い訳にしたこともありましたが、それもすべて家族のため。そのことを理解したうえで支えてくれていると思っていただけに、自分を「家政婦」と表現した妻のひと言に衝撃を受けたといいます。
妻は気が利く性格だと評判で、親戚が集まったときも率先して家事を行い、「ほんとうにいいお嫁さんをもらったね」と褒められることもしばしば。男性は、鼻高々だったといいます。さらに先日亡くなった母が要介護となったときも、「わたしが介護を手伝えばいい?」と言ってくれたのは妻からで、ただただ感謝していると男性。ただ妻いわく「そう言わないといけない雰囲気だったわ」と振り返ります。
――まわり(親戚)も「長男の嫁」がみるべきと思っていたでしょ
――みんな(=家族も親戚も)私のこと無意識に「家政婦」と思っているのよ
――それが分かっているから自然と「わたしがやります」って言っちゃうの
義母が要介護認定を受けてから同居をスタートし、在宅介護は5年にも及んだといいます。