米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が元通訳からおよそ27億円を搾取された事件で話題になったのが「ギャンブル依存症」の怖さです。あれほどの大金ではなくても、パチンコに通い続けてお金を溶かしてしまい、生活が破綻してしまった…といった話は昔から耳にするでしょう。お酒やタバコ、パチンコなどがやめられないのは「意志の弱さのせい」と考えがちですが、実際には治らないことも少なくない「怖い病気」だといいます。今回は和田秀樹氏による著書『和田秀樹の老い方上手』(ワック)から一部抜粋し、依存症について解説します。
酒、タバコ、ギャンブルがやめられないのは「意思が弱い」からではなく「病気」だから。想像以上に怖い「依存症」の実態【有名精神科医が解説】
治療施設がほとんどない…くれぐれもご注意を
もう一点、依存症が病気であることが明確に意識されていない弊害の一つに、依存症の治療施設がほとんどないことが挙げられます。「ウチの子はスマホを10時間も手離しません。どうしたらいいでしょう」というような相談を受けると、私は「スマホを取り上げなさい」と答えます。そうすると、「取り上げると泣きわめいて手に負えません」というような話になる。
これはもう立派なスマホ依存症ですから、治療施設に入れなければどうしようもありません。それなのに日本に治療施設が無きに等しいのは、基本的に病気だと思われていないからでしょう。「意志あるところに道は開ける、精神一到何事か成らざらん」という精神論が支配しているからです。
日本では、依存症のトリガーになる恐れのある派手な広告があふれている一方で、いざ依存症になった時に頼れる治療施設がないために、一生苦しむことになりかねない。お酒の量が増えている人、スマホがないと不安で仕事中もチラ見してしまう人は、すでに依存症の一歩手前です。軽いうちならともかく、重症になると自制がきかなくなります。くれぐれもご注意ください。
ただ、残念ながら依存症というのは、治療施設があっても治せないことが少なくない怖い病気です(もちろん、医療施設がないよりあるほうがずっとましですが)。ある種の人には手を出さないことしか、予防法はありません。だから、政府がなんの規制もしないことや無責任な広告の垂れ流しに腹が立って仕方がないのです。
和田 秀樹
精神科医