令和元年に金融庁が告げた「老後2,000万円問題」などもあり、日本のお年寄りは貯金に励む傾向にあります。ですが、お金を使わなかったために遺産問題などのトラブルが起きたり、身体が動かなくなってから「もっとぜいたくをしとけばよかった」といった後悔にかられたりするケースも少なくないといいます。今回は和田秀樹氏による著書『和田秀樹の老い方上手』(ワック)から一部抜粋して、高齢者が積極的にお金を使うべき理由について解説します。
年をとったら、これまでの考え方をいったん白紙に戻す
年をとったら、ものの考え方を少し変える必要があります。いつまでも若い頃の価値観でものを見たり、現役でバリバリ働いていた時と同じような考え方をしたりしていると、働かないことに引け目を感じたり、人の世話になるのは恥ずかしいと思ったりして、自分を苦しめることになりかねません。
ですから、定年退職を機会にマインドリセットをする。これまでの考え方をいったん白紙に戻す必要があると思います。
それまでの会社人生を振り返ってみると、上司の機嫌をとらなければいけなかったり、仕事をスムーズに運ぶためにみんなと仲良くしようと努力して、嫌われないようにうまく立ち回ったり、どんなに腹が立っても我慢したり、あるいは前の晩遅くまでお得意さんと付き合っても、絶対に遅刻せず定時に出社しなければいけないとか、いろんなことがあったのではないでしょうか。
定年退職したら、もうそんな煩わしい人間関係に気を遣わなくていい。もう細かいことは考えず、誰に遠慮も気兼ねもすることなく、自分の好きなように生きていいはずです。
それなのに、会社勤めの気分がなかなか抜けず、人目を気にするお年寄りって意外に多いんです。たとえばお年寄りのマスクですが、みんながしているからなかなか外せないという人がいます。
誤解してほしくないのは、マスクはウイルスに感染しないためにするのではなく、他人にうつさないためにするものだということです。だから、人がいないところでは堂々と外していいんです。そういうことも含めて、年をとったらとったなりの考え方に変える必要がある。