米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が元通訳からおよそ27億円を搾取された事件で話題になったのが「ギャンブル依存症」の怖さです。あれほどの大金ではなくても、パチンコに通い続けてお金を溶かしてしまい、生活が破綻してしまった…といった話は昔から耳にするでしょう。お酒やタバコ、パチンコなどがやめられないのは「意志の弱さのせい」と考えがちですが、実際には治らないことも少なくない「怖い病気」だといいます。今回は和田秀樹氏による著書『和田秀樹の老い方上手』(ワック)から一部抜粋し、依存症について解説します。
酒、タバコ、ギャンブルがやめられないのは「意思が弱い」からではなく「病気」だから。想像以上に怖い「依存症」の実態【有名精神科医が解説】
アルコールやパチンコの依存症に対する認識が甘い日本
日本の場合やっかいなのは、依存症を病気だと思っている人が少ないから、海外では多くの国で禁止されているお酒の広告が野放しになっていることです。ビールの缶を「プシュッ!」と開けて、おいしそうにゴクゴクっと飲んで「うまい!」とひと言。こんなものを見たらせっかくアルコールをやめているのに、ついつい飲みたくなってしまいます。
しかも日本では24時間アルコールが買える。深夜、ビールを飲みながらテレビでサッカーとか観戦していて、ふと気がつくとビールがなくなっていても、コンビニに行けばいくらでも手に入ります。確かに便利なことこのうえない。しかし、それではアルコール依存症を助長するばかりです。
海外に旅行された方はご存じだと思いますが、たいがいの国では夜11時以降はお酒を売ってくれません。TVコマーシャルに対しても日本ほど寛容な、言い換えれば甘い国はありません。いくら商売だからって、飲酒シーンの広告を四六時中流しているのは世界から見れば非常識そのものです。
禁酒しているのに、コマーシャルを見てお酒を買いに走ってしまった場合、責められるのはその人の意志の弱さだけで、依存性の高い商品を、悪魔のささやきよろしく宣伝しているメーカーはまったくお咎めなしです。
確かに覚醒剤をやったら逮捕されますよ。売り手はもっと重い罪です。だけど、お酒やパチンコ、ゲームをやめられなくたって逮捕されることはありませんから、簡単に手を出してしまう。「わかっちゃいるけどやめられない」というわけです。
でも、パチンコなんかだと、たとえ逮捕されなくたって、破産して人生を台無しにしてしまう恐れがあります。
私の知るケースでは、生活保護を受けていながら、月に17万円ほど支給されるお金を引き出すやそのままパチンコ店に駆け込んで、3日くらいで使い果たしてしまう。その後は翌月まで1カ月近くほとんど飲まず食わずです。それなのに、翌月の保護費が入ると食べ物も買わずにパチンコにつぎ込んでしまう。もう完全に本能が崩壊された状態になっているわけです。
依存症というのはそれほど怖い病気なんです。だから、パチンコの換金は禁止するとか、アルコールの宣伝・販売を制限する、少なくとも飲酒シーンは全面的に禁止すべきだと私は思います。