企業の工場や生産現場において生産ラインの設計や管理を行う仕事、「生産技術」。本稿では、生産技術職YouTuber“生産技術の馬”氏の著書『生産技術あるある』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、生産現場や工場勤務でありがちなことを紹介します。他業種の方でも思わず「あるある!」と共感してしまう内容です。
「弊社は全国転勤があるけど、大丈夫?」「大丈夫です(ホントは嫌です)」⇒数年後の“悲惨”【転勤あるある】 (※写真はイメージです/PIXTA)

企業によっては全国転勤が多い

■全国各地、時には海外にも事業所がある「大企業」は転勤が多い傾向

大卒でメーカーに入ろうとすると、総合職採用になることが多いです。総合職とは、企業の幹部や管理職候補として採用されることが多い職種で、技術系総合職と事務系総合職に分けられます。総合職は様々な地域性を学んで、会社全体を把握していくことが求められるため、全国転勤が多くなります。

 

特に大企業になると、全国各地に事業所を展開しており、海外にも事業所があることが多いです。ただ、大企業だからといって全国転勤が必ずあるわけではなく、会社によって方針も違いますので、ずっと同じ事業所で勤務する場合もあります。

 

メーカーは比較的全国転勤が多い部類なので、大企業でかつ転勤がないメーカーに行くことはなかなか難しいと思います。

 

たくさん転勤したいという人もいるかとは思いますが、多くの人は転勤頻度が多いことを嫌がりますよね。私も独身のうちは数年に1回ぐらい転勤をしてもいいと思っていましたが、やはり結婚してからは妻の仕事の都合などもあるため、あまり転勤をしたくないと思うようになりました。

 

■退職理由第1位が「転勤」ということも

私の会社では、20代から30代の若手が多く退職していますが、退職する理由で最も多かったのが転勤だったと思います(あくまで体感です)。毎回異動してから2〜3年経って、異動が多い時期になるとみんなそわそわするのですよね。自分が関係なければいいのですが、次は自分かもしれないと思うと気が気ではありません。

 

しかも大企業ともなると、海外に拠点を持っているので、海外への赴任も考えられます。海外ともなると、一応拒否権はありましたし、海外赴任の希望者が少ないため、行きたいと手を上げれば行かせてもらいやすい環境でした。もちろん、海外に出向する人は総じて仕事ができる人なので誰でも行けるわけではありませんが。

 

ちなみに私はTOEICが300点ぐらいしかありませんし、海外は4ヵ国ほどしか行っていませんが、特にいい思い出もないし、日本の食事を食べ続けたいので絶対に海外赴任は嫌でしたね。

 

ただ、日本国内であればいろいろな場所に住むのは楽しいと思うタイプなので、全く異動がないよりは多少あってほしいと思いますね(2〜4年に1回は多すぎます)。全国各地で生活してみたいと考えている方は、大手のメーカーに勤務することをおすすめします。

家を購入した瞬間、異動

■マイホームに家族を残し、自分だけ単身赴任する事態に

「家を購入した瞬間、異動」

 

10文字でこの悲惨さがわかると思います。私は、この状態になっている人を多く見てきました。

 

そもそも、家賃補助は入社後何年までしか出ないということが決まっているので、その期限を過ぎる前に自分で家を建てる人が多いわけですね。

 

全く容赦のない会社の上層部は、家を建てたからといって、そんなこと関係なしに異動の辞令を出してきます。

 

異動の辞令を出された人は、すでに家があるので、自分以外の家族はその家に住んで、自分だけ単身赴任するという状態になります。子どもの成長を近くで見ることができなかったり、単身赴任中は広い家には住むことができないので寂しい気持ちになります。こういう状況に陥るのが嫌で、子どもが十分成長して、独り立ちできるようになってから家を買う人も少なくありません。

 

私も昔は、将来広い家を自分で建てたいと思っていた時期がありましたが、若いうちに建てるのは入社早々諦めましたね。逆に単身赴任がしたいという人には向いています。単身赴任はほとんど独身のような状態なので、結婚して10年以上経っているとその状態に戻りたいと思う人も割と多いようです。むしろ一人になりたいという人は、あえて弊社のような会社を選ぶのはありかもしれませんね。

 

■「全国転勤がある会社」は真剣に考えてから入社を。家賃補助の条件なども入念にチェック

全国転勤が発生する会社は、家を購入するなどの人生の一大イベントをこなす難度が格段に上がります。入社前の面接時点で、「弊社は全国転勤があるけど大丈夫ですか?」と聞かれますが、内心嫌でもその場では「大丈夫です」とほとんどの人が言うはずです。

 

その後、実際に入社して、やはり転勤が自分や家族の負担になるので退職していくという人は非常に多いです。実際にその状況になってみないとわからないのはありますが、全国転勤がある会社に入社を考えているときは、本当に問題がないのか、真剣に考えてみましょう。

 

私は転勤が多いメーカー、ほとんど転勤がないメーカー両方とも経験していますので、両方のメリットとデメリットを知っていますが、転勤が多いことによるデメリットはかなり大きく感じました。

 

入社後何年間は家賃補助が出るなどの条件も年収に大きく響いてきますので、そのあたりも入念に調べておいた方がいいでしょう。私が新卒のときはこんなことを教えてくれる人がいなかったので何も考えずに入社しましたが、これから就職、転職しようとする皆さんはぜひ参考にしていただければと思います。

 

 

生産技術の馬

生産技術職YouTuber

 

大阪出身。神戸大学の大学院を卒業後、生産技術者として工場で勤務。大手電機メーカーと大手食品メーカー2社の工場で設備管理・設備更新等を行い、さまざまな規模の工場で経験を積む。2021年よりYouTubeで生産技術者へ向けて情報発信を行っている。