万が一、何かあったときのために……そう思って、色々と備えるべきであるものの、特に若い時はイメージできずに、何も準備していないというケースも珍しくありません。このようなときに大病を患ったら……社会保障のひとつをみていきましょう。
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「障害年金」…癌も支給対象

さらに心配なのが、手術後。治療を続けながら、いままでのように仕事を続けられるのか。続けられたとしても、現在の給与は維持できるのか……特に子供が小さいうちは選択肢が限られ、不安は増すばかりでしょう。そこで知っておきたいのが「障害年金」です。

 

――障害年金⁉ 癌でも受け取れるんですか?

 

障害年金は、病気やけがによる障害のため、日常生活や働くことに支障が出た場合に受給できるもの。国民年金に由来する「障害基礎年金」と厚生年金に由来する「障害厚生年金」があり、「初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること」「初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと」が共通する条件。ほか、それぞれに受給要件があります。

 

がんであっても、障害の認定基準と照らし合わせて認められれば、障害年金を受け取ることができ、障害認定基準は以下の通り。

 

●1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が「常に介護が必要な状態」と認められ、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

●2級:日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

●3級:身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

 

目に見えて身体の機能が変わった場合だけでなく、抗がん剤などの薬物治療の副作用による倦怠感など、内部障害でも、現在の仕事に支障をきたすことが認められれば支給の可能性があります。また障害年金は仕事をしていても受給できる場合もあります。

 

障害年金の支給を受けるには、本人または代理人による申請が必要。しかし制度は複雑なので、まずは年金事務所に相談をするのがベスト。さまざまなアドバイスにより、治療時の経済的不安も少しは和らぐかもしれません。

 

ちなみに支給額は、障害基礎年金で、1級が102万円、2級が81万6,000円(いずれも昭和31年4月2日以後生まれの場合)。子がいれば、1~2人目は各23万4,800円、3人目以降は各7万8,300円が加算。障害厚生年金は、厚生年金加入期間中の標準報酬額と加入期間で算出。1級は報酬比例の年金額の1.25倍、2級は報酬比例の年金額が支給され、65歳未満の配偶者がいる場合は、23万4,800円が加算されます。さらに3級の障害厚生年金は、報酬比例の年金額のみで、配偶者がいることの加算はありません。ちなみに3級の場合の最低保証額は61万2000円(昭和31年4月2日以後生まれ)とされています。

 

[参考資料]

公益財団法人生命保険文化センター『2022年度生活保障に関する調査』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

日本年金機構『障害年金』

日本年金機構『障害年金の対象となる病気やケガにはどのようなものがありますか。』