東京23区の新築マンション市場について、価格の決定構造がコロナ禍を経てどのように変化したのか、また今後、新築マンション市場はどうなっていくのか。ニッセイ基礎研究所の吉田資氏が考察します。
「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2023年】 (写真はイメージです/PIXTA)

4.おわりに

本稿では、昨年に引き続き、東京23区の新築マンション市場を概観した。東京23区の新築マンション価格は前年比+9%上昇した。特に、資産性を重視する傾向が強まったことで「都心」は前年比+13%、「タワーマンション」は前年比+12%上昇した。

 

また、新築マンション価格の決定構造を分析し、コロナ禍以降、「駅近」志向が強まっていること、テレワークの普及等の影響を受けて「広さ」のプライオリティ低下と「中心部へのアクセス」の評価の高まりに揺り戻しの動きがみられることを、確認した。

 

供給面に関しては、着工戸数の減少等を勘案すると、東京23区の新規供給戸数が大幅に増加する可能性は低いと考えられる。

 

一方、需要面に関して、金融政策正常化に伴う住宅ローン金利への影響が懸念されている。また、新築マンション需要を支えてきた30代および40代の人口について、30代人口が概ね横這いで推移する一方、これまで大幅に増加していた40代人口は減少に転じる見通しである。今後の金利動向や人口動態次第では、需給環境が悪化に転じる可能性があり、注意する必要がある。

 

コロナ禍を契機に、在宅勤務を取り入れた働き方が定着したことで、新築マンションに求める機能や評価目線に変化が生じている。マンション開発事業者は、市場環境を注視しながら、消費者ニーズの変化に即した事業方針の策定が求められることになりそうだ。