昨今、高齢者の住まいとして有効な選択肢になりつつある「老人ホーム」。入居の理由はさまざまですが、ひとつが「パートナーを失くした喪失感から」というもの。特に妻に先立たれた夫が入居を決断するケースは多いようです。しかし、せっかく決めた老人ホームでも退去に至ってしまうことも珍しくないとか。みていきましょう。
ひとりは寂しくて…年金月30万円超・妻を亡くした〈69歳の元エリート〉、孤独に耐えられず「老人ホーム」に入居も、半年で退去した理由

寂しくてひとり暮らしに限界!見学して決めた「老人ホーム」だったが…

周囲が心配するほどの伯父の激変ぶり。

 

――前はメタボを心配するほどだったのに……

 

さらに伯父は事あるごとに「寂しい」「寂しい」と訴えるようになったものだから、親戚が皆、心配を口にする……そんな事態が急変する出来事が。突然、「この家も売って老人ホームに引っ越すことにした」というのです。伯父いわく、

 

――老人ホームなら、食事も掃除も洗濯もしなくてもいい

――常に同年代がいるから、寂しくない

 

というのが決断の理由。いまのままでは伯父もやせ細ってどうにかなってしまう……と心配していた親戚も、それであれば、と胸をなでおろしたといいます。

 

伯父はいくつかの老人ホームを見学。「年金をもらうようになったら月30万円くらいになるはず」と伯父。お金の心配はないから、少々高くてもいつまでも安心して暮らせることが第一条件と、いまは必要なくても、医療や介護のフォローがしっかりしているホームを選んだといいます。

 

これで男性もひと安心かと思いましたが、話には続きがあります。入居から半年経たずに、伯父はホームを転居したというのです。

 

――えっ、何がいけなかったの?

 

男性が伯父に聞いたところ、「自宅にいたときよりも、もっと孤独だった」と耳を疑うような理由を口にしたのです。伯父の話を整理すると、

 

・さすがに月額費用が高いだけあり、サービスの質は申し分なし

・ここなら終の棲家としても申し分なし

・しかし入居者はみな現役を引退した人たち

・ホームから時々仕事に出かける伯父とは話が合わず

・伯父は常にホームでもひとり。周囲に人がいるだけに余計に孤独を感じた

 

話を聞いた男性は、いまいち釈然としない気持ちになったといいますが、本人が「寂しい」「孤独だ」というなら、仕方がありません。結局、伯父と同じように現役で働く人も入居するホームへと転居を決めました。

 

老人ホームに入居する理由はさまざまですが、入居前の施設見学は必須です。その際に、チェックすべきポイントが色々とあります。そのひとつが「入居者」。施設によって、要介護者のみとか、自立している人のみとか、要介護者も自立している人もOKなど、条件はさまざま。同じような入居条件だったとしても、要介護者が多い、自立している人が多い、認知症患者が多いなど、施設によって特徴があります。そのあたりをしっかりと確認して決めないと「入居者と合わない」という結果に。男性のように退去を決めるケースも珍しくないのです。

 

[参考資料]

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』