環境を破壊した「補助金行政」

養老 僕はずっと戦後を生きてきたんですけど、結局いちばん関心があったのは虫捕りですからね。環境に関しては徹底的に悪くなっていったんですよ。いまだに悪くなりつつある。

自民党の総裁選(2021年9月)があったじゃないですか。あの時、4人の候補の討論を珍しく見たんですよ。ところが、その討論の中に、日本の環境のことについて触れた内容は一つもなかった。この人たち、僕がいちばん重要視していることに一切関係がないんだなと思いましたね。

名越 日本は国土の7割が森林です。それを無視している。

養老 去年、赤とんぼがいないっていうんで話題になりました。実は、前からだいぶ問題になっているんですよ。虫がいないんですよ。昔を知っているとよく分かる。どのくらいいなくなったか。ホントに探さなきゃいない。

名越 昭和30年代、40年代は公園でちょっと大きな石をひっくり返すと、うじゃうじゃといました。そういえば、今は本当にいないですよね。

― 農薬をはじめとする環境の変化が原因でしょうか。

養老 複合的でしょ。一言で言えるもんじゃない。相手が網の目ですからね。なんで網の目がこんなに粗くなっちゃったか。

例えば太陽光発電を進めようということでパネルを置いたけど、日が当たんないから、上の雑木林を切ったとかね。いろいろ揉めてますよね。

風力はね、紀伊半島の付け根の山のてっぺんに、山脈に沿って大型の風車をずーっと置く案があってね、どこかの会社がやろうとしたけれども、これを三重県知事が止めてね。それで知事さんも結構働いてるなって思ったね。リニアを止めてる川勝さんもね。

太陽光のパネルも政府が補助金を出すから、お金になる間はつくるんでしょうね。補助金行政がいかにダメかってことを、みんな知っているはずなんだけども。日本全体が花粉症になっているのは、戦後に杉を大量に植えさせたからですよ。1本いくらでって補助金を出した。ダメなんだよ、そういうのは。

名越 僕が間違っているのかな、再生可能エネルギーとか、いろいろそれに関するものを読んでみても、こんなものが代替できるわけがないだろうと思っています。3つ4つ表とかグラフを見れば中学生の知識があれば、あれ? と分かるのに、あと温暖化のことについても、どれだけ信憑性があるのかと。

気候学者に言わせると、もう長い間、温暖期が続いていて、いつ寒冷期が来るか分からないということを読んだりするのに、当代一流と言われている学者たちが国連に集まって温暖化を何とか止めろって、そんな大それたことが本当に分かっているのか、僕はどうしても躊躇してしまいます。怒られるでしょうが、それどころか金以外の何が原因か分からないですよね。

それも複雑な議論ではなくて、まったく多様な議論が起こらない。じゃ、試してみようと。2年試してダメだったら仕方ない。そんな動きもない。何兆ドルも動いていて、そのお金の巨大な歯車の慣性力でずっと動いている。

簡単に言うとですよ。権力かもしれない。片一方に回りだすと、それに乗っからないとという人間の癖、あまりにも単純なことで何兆ドルも動いている感じしか、どうしても僕は受けないというのが本音なんです。