学校を卒業して以来、40年あまり、必死に働いてきて迎える定年。そのあとも働くか、働かないかは人それぞれですが、一旦はゆっくりしたいなどと、思いを馳せている人は多いのではないでしょうか。しかし、そんな夢も叶うことなく、幻のように消えてしまうケースも。みていきましょう。
「定年後はハワイ旅行!」と夢みたが…年金月38万円の〈60代夫婦〉悠々自適な老後が崩壊、「年1回の国内旅行も無理」と落胆のワケ

「親の介護」の現実…自分の親だろうと相手の親だろうと、妻に負担はかかりがち

年齢とともに親との同居率が増加……その背景にあるのは「親の介護」です。

 

介護が必要なケースは、「妻の父親」で6.8%、「妻の母親」で13.7%、「夫の父親」で 4.8%、「夫の母親」で11.2%。いずれの場合も、父親より母親のほうが介護の必要なケースが多くなってなっているのは、男性と女性の平均寿命の差から考えれば当然の結果だといえるでしょう。

 

さらに主な介護者についてみていきましょう。

 

●「妻の父親」においては「妻の母親」が最多で33.2%。続いて「妻」が21.4%。

●「妻の母親」においては「妻のきょうだい」が最多で31.2%。続いて「妻」が27.6%。

●「夫の父親」においては「夫の母親」が最多で33.2%。続いて「夫のきょうだい」で19.5%。

●「夫の母親」においては「夫のきょうだい」が最多で22.5%。続いて「夫」が16.3%。

 

どの親の介護でも、男性よりも女性のほうが介護負担が重い傾向にありますが、「妻が夫の母親の主な介護者」になる割合は13.2%に対し、「夫が妻の母親の主な介護者」になる割合は2.6%。相手の母親の介護においても「妻」に介護負担がかかる傾向にあることが分かります。

 

介護者としての妻について焦点をあてていくと、60代の妻で「(家族の)介護経験あり」は50.2%。「現にいま介護している」は全体の15.3%でした。また現在、介護をしている妻のうち、中心となって介護をしている妻の割合は、「20代以下」で60.0%、「30代」で47.1%、「40代」で44.4%、「50代」で54.1%、「60代」で69.3%、「70代」で91.8%。介護において、妻への依存度が高いことが分かります。

 

さらに介護経験のある60歳未満の妻において、介護にかかわり始める直前に「仕事をしていた」と回答したのは77.3%。そのうち6.2%が「介護のために離職」と回答。「介護以外の理由でやめた」と合わせると、介護に携わる直後に3割強が退職の選択をしています。

 

冒頭の女性の場合、親の介護負担は半々で、義母も自分でできることは自分でしたいという気持ちが強いためそれほど大きな介護負担はないといいます。

 

――いま、心配なのは「老老介護」。いつまで義母の介護が続くか分からない。そうなると、最後に頼れるのは「お金」だけ。定年前に抱いた夢は諦めた分、お金の心配はしたくない

 

定年を迎えたらハワイ旅行……そんな夢はいまや遠い昔話。義母の介護が終わったら施設にでも入って悠々自適な生活を送るというのが、今の夢だといいます。新たな夢の実現のためにも、働けるうちは働くのだといいます。

 

[参考資料]

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査 報告書』