ひとり暮らしのシニアの中には、「部屋が片づけられない」という悩みを持っている人が少なくありません。今回は、シニア世代の名医・保坂隆氏の著書『お金をかけず気軽にできる 「ひとり老後」が楽しい77の習慣』(KADOKAWA)から、なかなかモノが捨てられないときに、あっさりと手放せる方法をご紹介します。
「いつか必要になるかもしれないから…」→家中にモノがどっさり。シニアに多い「捨てられない病」の治し方【精神科の名医が助言】
「捨てられない病」を治す
「いつか必要になるかもしれない」と、使うあてのない物まで大事に取っておく人は少なくありません。その結果、身のまわりや家の中には、さまざまな物がたまってしまうことに。
あるとき、知り合いの編集者が「自分が手がけた最新刊です」と、いわゆる自己啓発本を送ってくれました。「整理術」の本ではありませんでしたが、パラパラと見ていると、あるページに「毎週、10個ずつモノを捨てる」とありました。「要らない物、もう使うことがない物をいつまでも身辺に置いておくと、要るもの・要らないものを見分ける判断力が鈍ってしまう」と書かれています。
たしかに、毎週、要らないものを10個ずつ捨てると決めれば、身辺がすっきりします。同時に、何が必要で何が不要かを判断する能力が磨かれ、ひいては、あらゆる物事に対しても、どうするのが一番いいのか、的確に判断する能力が養われていくというわけです。
この本の著者は、毎週日曜日を処分デーと決め、奥さんも誘って、片方だけのイヤリング、使い込んでけっこうくたびれたエコバッグなどを処分したそうです。片方のイヤリングはペンダントにできるかもしれない、バッグはちょっとした買い物なら使えそうと思って手元に置いてあったものの、思い返してみると、そのエコバッグは3カ月以上も出番がなかったことから処分することに。どちらも「ないと困る物」ではなかったわけです。
ひとり暮らしの人は、どうしても「何かあったときのために……」「何かに使えるかもしれない」という気持ちになりがちで、物を捨てられないようです。しかし、ひとりだからこそ、身のまわりの不要な物は処分しておいたほうが身動きを取りやすいのではないでしょうか。
また、身辺の無駄な物、不要な物をゲーム感覚で探し出し、どんどん処分していくのは、思考力や判断力のアップにもつながるような気がします。
私は今、「Tシャツは引き出しに無理なく収まる数だけ」と決めています。じつは簡単なことで、新しいTシャツを1枚買ったら、古いTシャツの中から1枚選んで捨てるだけ。
不思議なことに、それをルールにしてから、Tシャツを1枚買うのも、ちょっと慎重になりました。それまでは、いいと思ったら無造作に買っていたのですが、「似た色のものがあったなぁ」とか「このデザインはすぐに飽きそう」などと見極めるようになり、知らず知らずのうちに買い物にブレーキをかけられるようになっていたわけです。
もしかしたら、上手な捨て方が身につくと、買い方も上手になってくるのかもしれませんね。
保坂 隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長