ひとり暮らしのシニアの中には、「部屋が片づけられない」という悩みを持っている人が少なくありません。今回は、シニア世代の名医・保坂隆氏の著書『お金をかけず気軽にできる 「ひとり老後」が楽しい77の習慣』(KADOKAWA)から、なかなかモノが捨てられないときに、あっさりと手放せる方法をご紹介します。
「いつか必要になるかもしれないから…」→家中にモノがどっさり。シニアに多い「捨てられない病」の治し方【精神科の名医が助言】
サッと捨てて心を軽くする
ひとり暮らしの人から「じつは部屋を片づけられなくて……」という話をよく聞きます。広い一軒家に住んでいる人、マンション住まいの人と、住環境はさまざまですが、みなさん悩んでいる様子です。
誰でも、生まれたときは身ひとつです。生まれ育って、一生懸命に働いて、いろいろなものを手にしても、墓場まで持っていける物は何もないといわれるように、あの世に旅立つときは身ひとつです。
知り合いのお母様は、お菓子の箱や包装紙までとっておくという人でした。ところがあるとき、親しい友だちが介護付きの有料老人ホームに入居。お見舞いと見学を兼ねて訪ねてみたところ、一番大きな個室でも、洗面台や作り付けの棚などを除くと、居住スペースは8畳分ぐらい。ベッドを入れたら、あとは小さな整理ダンスを置いておしまいというくらいの広さだったのです。
その友だちは、こざっぱりとした部屋にまとめあげて、快適な日々を送っているようでした。別の部屋も見せてもらったところ、かぎられたスペースをきちんと整理して暮らしている人もいれば、天井まで物を積みあげ、まるで物置で暮らしているような人も。どちらが暮らしやすいかは一目瞭然です。
友だちの暮らしぶりに刺激されたのでしょうか、それ以来お母様は、物をため込むことをやめ、身のまわりを積極的に整理するようになりました。あまりにも思いきりよく捨てるので、家族が「本当に捨てちゃうの?」と思わず聞くほど。「老人ホームに入るための準備よ」と言いながら整理を楽しんでいるそうです。
実際に施設に入るかどうかは別として、必要以上に物を持つことへのこだわりをなくし、身辺を整理する気持ちになるのは、ある程度の年齢となった人にとって大きな進化といえるでしょう。
じつは私も、年に一度か二度は身のまわりを片づけるようにしています。仕事の資料などが増えていくのは仕方ないのですが、せめて自宅の書斎ぐらいはもう少しすっきりしておきたい、と考えるようになってきたのです。
自分の部屋の片づけは誰かに任せるわけにはいきません。捨てていいもの、取っておくべきものの仕分けは自分にしかできませんし、他人に片づけられたり、どこかにしまわれたりしても、あとで厄介です。
休日をまる一日使って片づけるわけですが、このときの決まり文句が「あの世には持っていけない」という言葉。自分自身に言い聞かせてみると、取捨選択の判断に迷ったものでも意外にあっさりと手放せて、心が軽くなるものです。