3.バナナには「不溶性」と「水溶性」、両方の食物繊維がある

条件の3つ目、腸内環境が改善される成分についてです。

腸内環境をよくする食品と聞いておそらく多くの人が思い浮かべるのが、ヨーグルトや納豆といった善玉菌を含む発酵食品ではないでしょうか。新しい善玉菌を腸の中に取り入れて増やすという考えですが、腸内では腸内細菌たちがすんでいて、ともに助け合い共生しながらも、同時に激しい生存競争が日夜繰り広げられています。

たくさんの菌たちが幅をきかせているなかで、新参者の菌が生存するのは難しく、新しく摂取した善玉菌は、半日ぐらいしかとどまれないともいわれています。そのため定期的に発酵食品を摂取して腸に送り込むことが大切になるのです。

同時に目を向けたいのが、なかなか新しい善玉菌が定着しにくいのであれば、腸の中にすでにすんでいる善玉菌を元気にして、増殖させていく方法です。人間も職場の環境がよく、健康的な食事を続けていれば、パフォーマンスがあがると思いますが、善玉菌も同じです。

・腸を善玉菌が居心地のいい環境にする
・元気になる食べ物を与える

この2点が善玉菌を元気にするコツになります。そして、これらを実現するために役立つのが食物繊維です。

食物繊維は一般的に、水に溶けるかどうかで、2種類に分けられます。善玉菌が居心地のいい環境にするのが、水に溶けない「不溶性食物繊維」です。

善玉菌の居心地がいいのが、腸に便がたまっていない環境です。不溶性食物繊維は、水分や老廃物などを吸着して、便のかさを増やして排出しやすくしたり、腸を刺激して、ぜん動運動を活発化し、排便を促したりといった性質をもっており「腸のおそうじ繊維」といえる存在です。ちなみに、不溶性の食物繊維は、にんじんやごぼうといった根菜類、小麦、ライ麦といった穀類、ほうれん草、レタスといった葉物の野菜、大豆、枝豆などの豆類、きのこなどに含まれています。

そして、善玉菌を元気にするためのエサとなるのが、もう1つの水に溶ける「水溶性食物繊維」です。先ほど説明した「短鎖脂肪酸」は、この水溶性食物繊維を善玉菌が食べることでも産生される、いうなれば「腸のお食事繊維」といった存在です。また、便をやわらかくして出やすい状態にしてくれるという効果もあります。水溶性植物繊維は、昆布やわかめといった海藻類、こんにゃく、里いもなど、ヌルヌル、ネバネバしたものや、ごぼうなどに多く含まれています。

この2つの繊維をバランスよくとることが腸内環境を整えるためには大切です。

ちなみに、食物繊維は、その摂取量が多いほど、死亡リスクが低くなる、うつ状態になりにくくなる、最近では、睡眠の質が低くなる原因といわれる歯ぎしりとの関係性が示し唆さされるなど、いま注目されている食品成分です。

バナナには不溶性と水溶性、両方の食物繊維が含まれています。また、水溶性食物繊維と同様に善玉菌のエサとなるフラクトオリゴ糖という物質も含まれています。そしてなにより、「第3の食物繊維」、「ハイパー食物繊維」といわれる「レジスタントスターチ」という物質が多く入っているのです。

小林 弘幸
順天堂大学医学部教授